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2025-06-01

規制緩和に両親をころされた

父親は、大手保険会社代理店(自営)をしていた。

儲けのほどはわからなかったが、子どもながらに中流の下くらい、2人の子どもを大学公立)に入れることならなんとか・・・レベルの家庭だったと思う。

 

しかし、'00年代前後に進んだ保険業界の規制緩和によって、保険代理業の経営は苦しくなっていった。

父は、誰にも相談せず、借金して生活費を賄っていた。

発覚したのは数年後、既に借金は1千万円を越えていた。

  

家族会議の場で、父は、「こんなことになったのは、小泉政権のせいだ」と言った。

今ならわかる。確かに規制緩和」という時代の影響をマトモに受けたのだろう、と。

しかし当時、借金を隠していた父への怒り心頭だった私たちは、「自分の怠慢を、時代のせいにするな」と、父をさんざん責めた。

父は何も言い返さなかった。ただ、家計の立て直しに向けて、それまで数十年吸っていたタバコを、家族会議の日からやめた。

 

それからは、母が司法書士借金返済の相談をし、私たちも返済を手伝って、10年以上かかって返済を終えた。

しかしその頃、母のガンが発覚した。

後に聞いたところによると、少ない収入で何とか家計管理を続けてきた母にとって、突然の1千万円の借金、長期に渡る返済、子ども大学へ行かせることができないかもしれない…という不安は、相当のストレスだったと言う。

借金がガンの直接原因ではないかもしれないが、母自身はそう捉えていた。

数年の闘病の後、母は他界した。

一人になった家で過ごすことを嫌がっていた父も、母を追うように病気他界した。

 

もしあの時代規制緩和がなかったら、父はここまで借金を作らずに済んだろう。

そして母も、借金返済のストレスを抱えずに、もう少し長生きできたかもしれない。

それは、実現しなかった仮想世界だ。

その世界では、財政は今ほど健全化していないかもしれない(今だって健全とは言えないが)。

それでも、私の両親がまだ生きている世界

 

保険商品CMを見ると、そんな仮想世界のことをふと考える。

 

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