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2025-05-29

『錆びた梁の下で ―第五章:氷河期の影と未来の影―』

祐介は現場に立ち続けた。

だが、その現場はかつての熱気を失い、

冷え切った風が吹き抜ける場所になっていた。

「人が足りない。経験者がいない。」

そう呟くのは、かつての同僚たちだ。

かつて5000人いた社員は1000人に減り、

多くは氷河期世代若者たち

彼らは司法試験に受かっても、

法律事務所の門は閉ざされ、

建設現場で汗を流すしかなかった。

経験不足の若者たちが、

建物安全を守るはずの点検を担い、

しかし、知識判断力も乏しく、

形式的なチェックだけが横行する。

トンネル天井が崩落するなんて、

途上国じゃあるまいし…」と嘆く声は消えず、

運営会社外注主義を貫き、責任分散されるばかり。

---

建築費用は5割も上がった。

それは、現場人手不足技術の低下のせいだ。」

祐介の言葉は重い。

だが、それだけではない。

過酷労働環境精神的なプレッシャー

低賃金不安定雇用

それは、失われた30年の産物だった。

---

祐介はふと空を見上げる。

彼の目に映るのは、崩れかけたビルの梁の影と、

その下で懸命に働く若者たちの姿。

「このままでいいのか?」

祐介は問う。

失われた世代叫びを、次の時代にどう繋げるのか。

---

倉上龍の言葉が、遠くで響く。

「どれだけの命が奪われたのか、

どれだけの未来が閉ざされたのか。」

そして、祐介は決意する。

「語り継ごう。

この錆びた梁の下で、何が失われ、

誰がそれを奪ったのかを。」

未来を見据えた祐介の歩みは、

まだ終わらない。

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