当時、仕事とプライベートがうまくいっておらず、病気にまでなって人生に絶望していた。
仕事では圧倒的無能ぶりを発揮し、プライベートは非モテを童貞を極めており、ストレスから視力が一時的に低下。なにもいいことがない状況だった。
彼女は配信経験がない中でVtuberとしてデビューし、最初はポンコツだった中で努力を重ねており、その生き様に自分はあこがれを抱いていた。
片耳が悪いというハンディキャップを抱えながら、それを感じさせない活動への取り組み姿勢も尊敬していた。
当時、自分は彼女に自分を重ね、自分の人生を頑張ろうとしていたが、上手くいっていなかった。
画面の向こう側の彼女は、同じ事務所のメンバーと一致協力して素晴らしいパフォーマンスを見せており、視聴者を喜ばせるために全力を尽くしていた。
ライブ直前にコロナに感染し、満足の行く準備ができなかったにもかかわらずである。
その姿を見て、自分の中に電撃のような衝撃が走り、涙したのを今でも覚えている。
何年もの間、いつも自分の頭の中にあったモヤモヤがすべて消え、思考がクリアになった。
その時、彼女は自分の中でアイドル(神の偶像の方)になったのだと思う。
ライブのあとの感想の配信で、人生で初めてスパチャを、それも最高額で投げた。
あの日、自分は彼女の重ねてきた努力に比べ、自分の努力がいかにちっぽけであるかを思い知った。
自分のいままでの行動のすべてが独りよがりで、彼女のようには何も生み出せていないことを自覚した。
仕事もプライベートも、すべて自分の幼稚なこだわりのせいで、あらゆる立ち回りが悪いまま改善されていないことにまで思い至った。
あの日の感動は自分と彼女との約束になった。(とても一方的なものだが)
あの日以来、仕事では失敗を常に振り返り改善していくようにした。
仕事におけるあらゆる立ち回りを見直した。メールの即レスポンス、話し方の改善、チームにおける自分の役割を理解しての行動など、
全て彼女が教えてくれた(と自分が勝手に思っている)ものを仕事で実践した。
プライベートでは身なりを整えて、(ありえないことだが)もし偶然街中で彼女に会うことがあっても恥ずかしくないようにした。
人格も尊敬する彼女に似せるため、「こういう会話ではこのように返す、このように話しかける」を彼女の配信を繰り返し視聴し、真似していくようになった。
彼女との約束(自分の中の一方的なものだが)を守るために努力した。
仕事ではプロジェクトリーダーを任されるようになった。圧倒的無能をさらしていた調整業務も、まだ課題はあるが、人並みにできるようになった。
プライベートでは結婚し妻子を持つに至った。(妻からは、出会ったときは童貞とは思えないほどスマートだったとお褒めの言葉をいただいている)
いまでは忙しくなり、配信を見る機会はかなり減ってしまったが、