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2025-05-09

経済学は「程度の学問」「条件付きの学問

左右両極端の「経済的トンデモ図譜」

1. 「国の借金1000兆円で日本破綻する」vs「国の借金日本破綻しない」

見解正しい部分トンデモになる場合学問根拠・文献
破綻する」利払いが名目GDP成長を大きく上回る状態(r > g)が持続すれば、財政が持続困難にr<gを無視し「破綻必然」と主張/通貨発行国と家計を同一視</td> Domar (1944), Blanchard (2019)
破綻しない」自国通貨建て債務であり、中央銀行による流動性供給可能金利上昇・信認喪失リスクを完全否定永遠に問題なしとするReinhart & Rogoff (2010), IMF Debt Sustainability Analysis

2. 「財政赤字があるとハイパーインフレになる」vs「財政赤字があってもハイパーインフレにならない」

見解正しい部分トンデモになる場合学問根拠・文献
「なる」政府支出供給能力を大きく超え、中央銀行貨幣化すればインフレ圧力赤字の大小のみでハイパーインフレ予測戦時・政情不安国の特殊例を一般Sargent (1982), Cagan (1956)
「ならない」信頼ある中央銀行と低い需給ギャップ下では、赤字拡大でもインフレ抑制制限赤字を許容/構造供給制約・期待インフレの変化を無視Woodford (2001), Kelton (2020)(MMT節度ある立場

3. 「円安はすべて悪い」vs「円安はすべて善」

見解正しい部分トンデモになる場合学問根拠・文献
「悪い」実質賃金低下・輸入物価上昇→生活コスト上昇/原材料高で中小企業に打撃輸出増・企業業績改善などの側面を完全否定IMF World Economic Outlook (複数年)
「善」輸出競争力向上/国内生産回帰を後押し/観光収入の増加実質賃金インフレ影響を無視し「円安万歳」/所得再分配問題無視OECD Economic Surveys: Japan, BoJ経済物価レポート

4. 「消費税減税したら財政崩壊」vs「消費税減税しても財政崩壊しない」

見解正しい部分トンデモになる場合学問根拠・文献
崩壊する」社会保障財源の安定的確保が困難に/短期的に税収が急減する可能消費刺激効果や景気乗数を完全無視し、「破綻」と断定財務省財政の現状」, IMF Fiscal Monitor
「しない」不況時は減税による需要喚起名目GDP増→他税目で税収補填可能消費税構造的安定性を過小評価し、政治的楽観論に流れるBlanchard & Leigh (2013)

5. 「借金子どもへのツケ」vs「借金子どもへのツケではない」

見解正しい部分トンデモになる場合学問根拠・文献
「ツケ」債務の利払いが将来世代租税負担選択肢を狭める可能国債国内保有資産効果無視し、単なる負債とするAuerbach & Kotlikoff (1987), 財政制度等審議会資料
「ツケではない」国債国民金融資産でもあり、世代間で資産負債相殺される場合利払い負担の将来波及・不公平な再分配の可能性を無視Barro (1974), Buiter (1985)

✅ 総括:「経済政策の命題は、極論に傾いた時点でトンデモ化する」

経済命題原則として 条件付き(ceteris paribus)。

「程度・タイミング制度設計文脈」が無視されると、正しい命題トンデモします。

このように、どちら側にも学問根拠がある一方で、それを逸脱した「全か無か」の主張は危険です。必要なのは、「仮に」「一定の前提下で」「中長期的に」どうかを問う態度です。

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