見解 | 正しい部分 | トンデモになる場合 | 学問的根拠・文献 |
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「破綻する」 | 利払いが名目GDP成長を大きく上回る状態(r > g)が持続すれば、財政が持続困難に | r<gを無視し「破綻は必然」と主張/通貨発行国と家計を同一視</td> | Domar (1944), Blanchard (2019) |
「破綻しない」 | 自国通貨建て債務であり、中央銀行による流動性供給が可能 | 金利上昇・信認喪失のリスクを完全否定/永遠に問題なしとする | Reinhart & Rogoff (2010), IMF Debt Sustainability Analysis |
見解 | 正しい部分 | トンデモになる場合 | 学問的根拠・文献 |
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「なる」 | 政府支出が供給能力を大きく超え、中央銀行が貨幣化すればインフレ圧力増 | 赤字の大小のみでハイパーインフレを予測/戦時・政情不安国の特殊例を一般化 | Sargent (1982), Cagan (1956) |
「ならない」 | 信頼ある中央銀行と低い需給ギャップ下では、赤字拡大でもインフレは抑制的 | 無制限に赤字を許容/構造的供給制約・期待インフレの変化を無視 | Woodford (2001), Kelton (2020)(MMTの節度ある立場) |
見解 | 正しい部分 | トンデモになる場合 | 学問的根拠・文献 |
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「悪い」 | 実質賃金低下・輸入物価上昇→生活コスト上昇/原材料高で中小企業に打撃 | 輸出増・企業業績改善などの側面を完全否定 | IMF World Economic Outlook (複数年) |
「善」 | 輸出競争力向上/国内生産回帰を後押し/観光収入の増加 | 実質賃金・インフレ影響を無視し「円安万歳」/所得再分配問題を無視 | OECD Economic Surveys: Japan, BoJ経済・物価レポート |
見解 | 正しい部分 | トンデモになる場合 | 学問的根拠・文献 |
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「崩壊する」 | 社会保障財源の安定的確保が困難に/短期的に税収が急減する可能性 | 消費刺激効果や景気乗数を完全無視し、「破綻」と断定 | 財務省「財政の現状」, IMF Fiscal Monitor |
「しない」 | 不況時は減税による需要喚起で名目GDP増→他税目で税収補填の可能性 | 消費税の構造的安定性を過小評価し、政治的楽観論に流れる | Blanchard & Leigh (2013) |
見解 | 正しい部分 | トンデモになる場合 | 学問的根拠・文献 |
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「ツケ」 | 債務の利払いが将来世代の租税負担・選択肢を狭める可能性 | 国債の国内保有・資産効果を無視し、単なる負債とする | Auerbach & Kotlikoff (1987), 財政制度等審議会資料 |
「ツケではない」 | 国債は国民の金融資産でもあり、世代間で資産・負債が相殺される場合も | 利払い負担の将来波及・不公平な再分配の可能性を無視 | Barro (1974), Buiter (1985) |
経済命題は原則として 条件付き(ceteris paribus)。
「程度・タイミング・制度設計・文脈」が無視されると、正しい命題もトンデモ化します。
このように、どちら側にも学問的根拠がある一方で、それを逸脱した「全か無か」の主張は危険です。必要なのは、「仮に」「一定の前提下で」「中長期的に」どうかを問う態度です。