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2025-04-11

ニュース見出しにおける「男消し構文」の調査報告

男性加害者 vs 女性加害者見出しでの性別表記の違い

主要メディア犯罪報道見出し分析したところ、加害者男性場合見出し性別記載されず、一方で加害者女性場合は「女」あるいは「女性」と明記される事例が確認されました。以下に具体的な例を示します。

以上のように、各媒体男性容疑者場合見出しから性別が“消える”ケースと女性容疑者場合見出し性別(女)が付与されるケースが見られました。特にNHKニュース見出しで顕著であり、男性加害者は「○歳の容疑者」と性別を記さずに報じている一方、女性加害者場合は「○歳女性」「○歳の女」と明確に女性であることを記載しています。他方、民放各局や新聞社では男性についても「○歳男」と記載する例が多く、NHKに比べると男性性別を省略する傾向は弱いように見受けられます

媒体別:「男消し構文」を使う傾向の分析

調査対象としたNHK日本テレビTBSフジテレビ読売新聞朝日新聞見出し比較すると、「男消し構文」を多用している傾向が最も強いのはNHKでした。NHKニュースでは、加害者男性場合見出し性別を記さず「容疑者」や職業肩書きのみを書く例が頻繁に見られます

他の民放テレビ局では、日本テレビNNN)やTBS系列JNN)、フジテレビFNN)などはいずれも見出しにおいて男性加害者であっても「男」と明示する傾向が強く見られました。例えば日テレNEWS事件報道では「23歳男を逮捕」「69歳男を逮捕」等、男性であることをそのまま見出し記載しています。したがって、民放テレビでは「男消し構文」はあまり使われていないと考えられます

新聞社系では、読売新聞朝日新聞ともに基本的見出し性別を明示するか、または実名報道場合は氏名(+年齢)を挙げるスタイルです。実名を出す際は見出しに「男」「女」を付けないケースもありますが、それは性別を伏せているというより氏名表記に置き換えているためです。匿名実名非公開)の場合には、読売朝日ともに男性なら「男」、女性なら「女」と見出し記載しています読売新聞オンラインYahoo!配信記事見出しでも「24歳男を逮捕」「大学生の女を逮捕」と明記されており、新聞系も男性だけ性別を伏せるような書き方は取っていません。

以上より、「男消し構文」を積極的に用いる傾向があるのはNHKなど一部の報道機関であり、他の多くの大手メディア民放各局・全国紙)は見出しにおいて加害者性別男性女性わず記載するか、少なくとも男性だけ特別に省略するような構文は確認されませんでした。

「男消し構文」が現れやす犯罪ジャンルと傾向

「男消し構文」が見られるケースを犯罪の種類別分析すると、暴行傷害性犯罪強盗殺人といった暴力犯罪加害者男性場合性別を記さなパターンが目立ちます。これらの犯罪加害者男性である事例が圧倒的に多いためか、NHKなどでは見出し上「容疑者「少年」等と表記し、男性であることを敢えて強調しない傾向があります。一方で、女性がこれら暴力的な犯罪を起こした場合には見出しで「女」「女性」と記載される傾向があります。例えば、女性による刺傷事件では「50歳女性」「41歳の女」といった表記が用いられ、女性加害者であることが強調されています。これは普段男性加害者となるケースが多いジャンル女性が犯した例外性を示すため、見出し性別を入れて伝えているものと考えられます

詐欺窃盗などの犯罪においても、男女で見出し表現が異なる傾向があります特殊詐欺グループ事件では、リクルーター役の加害者が18歳男性だった際にNHK見出しは「18歳容疑者逮捕」と性別を伏せて報じています ([特殊詐欺実行役集める「リクルーター役」か 18歳容疑者逮捕))。しかし、同じような特殊詐欺事件女性関与者がいる場合、他媒体では「27歳女ら逮捕」のように女性であることを含めて伝えています ([「パパ活相手から1600万円詐取の疑い 27歳女ら逮捕 大阪朝日新聞](※この例では男女2名の逮捕者のうち女性側を見出しに立てています)。窃盗事件でも、女性加害者場合は「25歳の女が逮捕」 ([【独自】払うふりして店立ち去る…無人販売店で「料金未払い ...]といった見出しになりやすく、男性加害者場合媒体によって「男」と書かれるか、NHKのように「容疑者」とだけ書かれるかの違いがあります

特に近年注目された児童虐待育児放棄事件では、母親である女性逮捕された場合母親の女を逮捕」「逮捕の女(母親)…」と報じられる一方、父親逮捕された場合には「父親逮捕」と続柄で書かれるか、氏名で報じられ性別見出しに現れないケースがあります ([母親マインドコントロールか 5歳児餓死逮捕の女 - 朝日新聞]。このように、女性が加わった犯罪はその女性見出しキーワードにしやすい傾向がうかがえます

まとめると、「男消し構文」が特に用いられやすいのは「加害者男性であることが事件としては平凡(典型的)なジャンル」です。暴行強盗性犯罪など典型的男性加害者となる事件では、男性であることを強調しない見出し(=結果的性別が消える見出し)が散見されます。一方、女性加害者となった場合や、女性が関与することが注目ポイントとなる事件ジャンル育児関連犯罪女性絡みの詐欺事件など)では、見出し積極的に「女」「女性」と入れられる傾向があります。 これはメディア側が読者・視聴者の注意を引くために「女性犯人である」点を強調しているとも言え、結果として男性加害者性別けが相対的に目立たない形になっています

結論

調査から、いわゆる「男消し構文」(男性加害者場合見出しから性別が消え、女性加害者場合に「女」「女性」と記載される構文)は、NHKニュース見出しで顕著に確認され、その他一部報道でも散見されました。一方、日テレTBSフジテレビといった民放各社や読売新聞朝日新聞など新聞系の見出しでは、男性加害者であっても性別を明示するのが一般的であり、必ずしも男性だけ性別を省略する書き方は主流ではありません。

また、「男消し構文」が使われやすい場面として、典型的加害者男性と受け取られやす犯罪暴行強盗性犯罪など)では男性性別をあえて示さず、一方で女性加害者となった場合女性関与が際立つ犯罪では性別を強調する傾向が浮かび上がりました。これはメディア報道における無意識バイアスや注目の集め方に起因する可能性があります。今後も見出し表現については、こうした性別表記の偏りに対する指摘が続くことが考えられ、各社の表記基準報道姿勢が議論されるでしょう。

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