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2025-04-04

トランプ関税フーバー世界恐慌

トランプが重関税を発表して世界恐慌を案じる人が出てきた。そりゃ当たり前なんだが、一つ忘れられてる事があると思う。

それはアメリカ自称保守でのフーバー政権評価というヤバい現象だ。

しかもそれが出てきた時期がまたヤバいリーマンショック後なんである経済恐慌回避政策が気に入らんって事なのだ

 

ニクソン評価フーバー評価

元々は2004~6年頃にニクソンが再評価されたというのに端を発している。

ニクソン世界経済をグチャグチャにしたニクソンショックを惹き起こしたのでどの国でも嫌われ者で最低の大統領扱いされている。

だが今の世界経済システムニクソンショックで再編成されたものであるし、デタントを推進してソ連牽制の為に中国と国交回復をした。

更に撤兵南越軍事訓練を進めてベトナム戦争から手を引く準備をした。これってイラクを平定しきれずに占領が長引いていた当時にオバマに期待されていた事と同じではないか

からニクソン嫌われ者でもそんなに無能じゃないしちゃん仕事をやっている。なのに評価が物凄く低いのは、マスコミを敵に回したせいでウオーターゲートで叩かれまくったからじゃね?という論調が出てきたのだ。

これにはネット議論が活発化して、マスコミオールドメディア、我らネット民=目覚めた真の民主主義者という今やお馴染みのアレがベースにある。

 

それでその流れで出てきたのが、世界史では無能大統領と教わる事が多いフーバーの再評価だった。

 

フーバー一般的評価

フーバーアメリカ発の大恐慌が起きた時に何も手を打たなかった事で有名だ。更に重関税政策による保護貿易を行ったので世界恐慌が一段と酷くなった。

その結果、アメリカカナダ合衆国中米ドルブロック経済圏を形成、他の国は植民地を中心とした各通貨ブロック形成した。スターリングブロック(英ポンド)、仏フランブロックと。

持たざる国の日独は独マルクブロック、日円ブロック形成したが小規模でありすぐにまた行き詰った。

その結果、独:ナチス全権委任ラインラント進駐→開戦、日:日朝満ブロックで洋行系財閥系救済→恩恵を受けない中小企業倒産して昭和恐慌関東軍によるなし崩し的に膨張政策化→日中戦争→仏降伏により仏印進駐ハルノート日米戦争と進んでしまった。

しかブロック経済もの凄く不経済で非効率不景気を産むのであるクルーグマンノーベル賞受賞理由はこれの理論化)。

そういう訳で、WW2後はブロック経済化防止しよう、貿易自由化世界規模の安全保障だ、という訳でGATTスタートさせてやって来た。

 

フーバー大統領退陣後も色々と外交をやっていてそっちでは功績残してるけど、大統領職としてはその後のルーズベルトと比べられて無能と言われる事が非常に多い。

 

ルーズベルト

フーバーの後のルーズベルト大統領ニューディール政策を行って恐慌を沈静化したというのが一般的評価だ。

でも、いやニューディール政策全然効果なんて無かったんだよ、経済が持ち直したのは単純にアメリカ戦争を始めて戦時経済に移行したからに過ぎない、という意見もある。

有名なのが経済学者のフリードマンだが、この人は反ケインズ旗手なので。そしてフーバーもこの立場だ。世間自分への評価に反発してるだけって気がすんだが。

また、フーバー日本真珠湾攻撃したのはルーズベルト日本を追い込み日米開戦誘導した、という説を唱えている。「ハルノート原因論」だ。これは日本右翼論壇でよく聞く話だろう。

そして露宇戦争に対してのロシアナラティブにもそっくりじゃないだろうか?FOXのタッカーカールソンなんかも「米国陰謀論」的なことを言っている。最近じゃ終風爺が「ネオコンロシアを追い込んだ」という説を書いて顰蹙食らってたが、これらの基礎の部分には、アメリカ自称保守論壇でのフーバー評価があるってことなのだ。

 

共和党観念主義独断主義的傾向

アメリカ思想的特徴はプラグマティズム経験主義的で小ぶりだったのだが、特に21世紀になってから観念論/独断主義思想集団が共和党に影響を与えるというのが多くなっている。

例えばネオコンサバティズム。その始祖はネオコンゴッドファーザーと呼ばれるアーヴィングクリストルなんだが、この人は元がトロツキスト。かの有名な『歴史の終わり』(フランシス・フクヤマ)が掲載された『国益』誌もクリストルが創刊したもの

トロツキー思想の特徴は「世界同時革命」で、世界中に戦争を輸出してその背後から各国の細胞共産党員)が内戦を仕掛て共産革命を起こすという物騒なものだ。谷沢永一によるとトロツキー日本語訳書は『ノルウェーの森』のような赤緑の装丁らしいです(谷沢は元共産党員)。

イラク戦争の強引な開戦などが世界同時革命の影響を芬々と感じさせるのでスキャンダル的に指摘される。

 

例えばネオリベラリズム。単に経済政策方向性というだけでなく「本来社会の在り方」的な観念論/進歩主義として人を惹きつけている。つまり実存にとっての嘗てのマルクス主義代用品だ。

歴史はこう進むはずなのに今の我が国はそうなっていない。だから変革すべきだ」という歴史実存が結びついた考え。「〇〇という団体農協など)は既得権益だ、それを崩すと理想的経済状態が出来する筈だ」。こういうの日本でも沢山見た。

高学歴化により若者には長いモラトリアムが与えられ、「社会に馴致される」事で形成される人格よりも「正当性に欠ける不合理慣行蔓延っている。若者はその不合理により迫害されている」というルサンチマン駆動される人格比重が大きくなる。そんな人格ネオリベ進歩主義と合体した全能感や実存を与える。

からリーマンショック後に政策フォーベアランス政策不良債権増を気にせずに積極融資せよとの行政指導)に転換すると、世界観が破壊されたような実存危機を覚える人間が出てくるのである

先ほどの終風爺も2013年になって「リーマンショックは越冬闘争派遣村と言い募った左翼によるフレームアップ」的な事を言っている。2008年には実存不安と不満に我慢していたという事だ。

また風呂無駄さんも2008年当時には大変にやさぐれていて、それまではネオリベ未来は明るい的なポジティブな事を言っていたのにFUDマーケ的な事を言っていた。これらは実存の棄損によるものだ。

 

トランプに変な保守シンクタンクが影響与えているのもこの流れ。

 

共和党はいしかこういう実存と結びついた観念論を吸引し、それが世界知識大衆を吸引するようになっていた。そこにリーマンショックが起こり、G7G20では財政出動フォーベアランス政策保護貿易主義排除合意された。これはアメリカなどでは政策の急転回でありそれが一部の知識層には実存ストレスとなったのだ。

そんな中で出てきたのがフーバー評価という訳である

そもそも共和党観念的に進めた事で発生した問題の尻拭いを民主党がするという流れがずっと続いてきていて、これのどこが保守なんだろうか。

 

上に書いてきたフーバー政策保護貿易北米ブロックカナダメキシコ併合)とトランプ政策が一致するのがお分かりだろうか?

何やら変なシンクタンク提言通りに進んめているというのもあるが、その基礎にはフーバー評価があるって事なのだ。そして彼らは一般社会的にフーバー否定されている理由ブロック経済圏による不況→持たざる国の膨張政策戦争、重関税による恐慌の激化、という評価を共有していない。

 

まとめ

フーバー評価する」(悪評を無視する)という事は次の事とイコール

 

世界経済は確実にシュリンクする

アメリカ発の恐慌が起きる可能性がある

・その場合他国リーマンショック後のような合意をしてもアメリカは従わず恐慌悪化させる

・特恵経済圏の拡大の為に戦争が起きる可能性(アメリカカナダ侵略など)

アメリカ排除した自由貿易圏を守る事で防衛すべき

・多極通商必須

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