ベースをもう十年以上やっているが、万年初心者である。万年初心者であるが、ベースは好きなので、新しい楽器がそろそろ欲しいと思っていた。
自分が持っていたのは購入時に十万円強のジャズベースタイプ(フジゲン製)で、ベースやギターをやる人なら分かるが、そんなに悪くない楽器である。そんなに悪くないが、なんというか十年もやっていると飽きがきて、自分の中でモチベーションが低下してきていたのが分かる感じで、ライブの対バンでいい音を出していたスティングレイという楽器がいいなと思いながら一年ぐらい経過している状況だった。
どうしようかなと思いながら御茶ノ水に何回か通うような週末を続けながら、ついこの前、楽器屋に新品のスティングレイが何本か入荷しているのを見て、とうとう思い切って買ってしまった。価格は42万円である。ベースやギターをやる人なら分かると思うが、けっこうな値段である。
ベースは20万円を超えるあたりからは、かなりモノが変わる、と以前聞いたことがある。逆に言うと自分は、演奏技術がかなりヘタクソなので、そんなにいい楽器を買う資格はないと思って、楽器屋の試奏なんかでも躊躇して、店員に対してもいちいち気後れしていたんだけれども、もうそういう日々がめんどくさくなっていた。
その日に接客してくれた感じのいい店員さんに促されて弾いてみた時、手元のアンプから以前ライブハウスで初めてスティングレイを聞いたのと同じ、ぶぅーん!という勢いのある低音が出てきた時に、あぁ買ってしまおう、と思って、その場でカードで支払いをして自宅まで持ち帰ったのである。
高価な楽器を買って良かったことが一つある。それは、もし良い音が出ない時には原因が楽器ではなくて、自分の側にあるのだとはっきりと分かるので迷いが生じないということである。自分の場合、高音の弦を弾く時に音の張りがなくなってしまうので、それをいつも楽器のせいにして、いわば「悪い楽器の短所をケアしてやるんだ」みたいな気持ちで、低音弦のハイフレットで演奏するのがクセになっていた。ところがいざ新しい楽器で高音弦を弾いてみても良い音が出ないので、それは楽器のせいではなく自分の演奏技術のせいだということが言い訳の余地なく明確に分かる。その後試行錯誤の結果分かったのは、右手のピッキング位置が高音弦のときにはブリッジ側にズレるクセがあり、ピックアップからの距離が変わるせいで音色が変わっていたのであった。ごめん、フジゲン、悪いのは俺だった。
高い楽器を買ったからと言って劇的に演奏が良くなるなんてことはなくて、結局楽器は自己満足なんだと思う。でも買わなきゃ分かんなかったことにも気づけたし、何よりも自己肯定感が半端ない。よかったと思う。
うひゃ~お金持ち~ィ!
楽器の値段に見合ったレベルの演奏が必要だってことね、 ヴァイオリンの話になるけどストラディバリなんていくらするんだよって、 そしてそのストラディバリでも演奏者がダメなら音...