YouTuber・てんちむさんが敗訴した裁判について、SNSでは「てんちむさん、かわいそう」という声が多く見られるが、冷静に考えると、その評価は少し違うように思う。
この裁判は、てんちむさんがプロデュースしたナイトブラ「モテフィット」を販売したYUIKU株式会社との間で行われたものだ。東京地裁は2024年12月16日、てんちむさんに対し3億8457万4504円の損害賠償支払いを命じる判決を下した。事業者間の裁判でこれほどの損害賠償額が認定されたということは、それだけ明確な証拠や根拠に基づいて、YUIKU株式会社が受けた損害が裏付けられたということだ。
そもそもこの問題の発端は、てんちむさんが豊胸手術を受けていた事実を隠しつつ、「モテフィット」をプロデュースし、バストアップ効果があると宣伝したことにある。商品は累計約55万枚が販売され、総売上は37億円に達するヒット商品となった。しかし、その後豊胸手術の事実が発覚し、てんちむさんは謝罪して返金対応を表明する事態に発展した。
YUIKU株式会社は、契約違反、返品対応の費用、売れ残り在庫、さらにはブランドの信頼失墜による損害を主張し、約5億円の損害賠償を求めて提訴。裁判所はその主張を一部認め、最終的に約3億8000万円という金額が認定された。これは「かわいそう」という感情的な判断ではなく、「てんちむさんの不法行為によって、YUIKU株式会社が現実に3億8000万円の損害を受けた」事実が証拠によって認定されたことを意味する。
一方で、てんちむさんは判決後、自身のXアカウント名を「圧倒的敗訴」に変更し、「裁判結果ですか?お察しください」と自虐的なコメントを残している。さらに、今回の判決や一連の返金対応により、総額5億円もの支出を負うことになり、自己破産も検討していることを明かした。
しかし、ここで忘れてはならないのは、YUIKU株式会社も決して「勝者」ではないということだ。約3億8000万円の損害賠償が認定されたとはいえ、その金額を現実に回収できるかは不透明だ。企業にとって、信頼失墜やブランドイメージの毀損は計り知れない痛手であり、ビジネスへのダメージは長期的に続く可能性がある。
「てんちむさん、かわいそう」という風潮が広がっているが、現時点で本当に気の毒なのは、重大な損害を受けたYUIKU株式会社だ。事業者間の裁判で賠償額が認定されるのは、感情論ではなく、あくまで明確な証拠と根拠に基づくものだという点を忘れてはならない。
これはだれが悪かったのだろうな