不登校をAI(人工知能)で予測する――。こんな取り組みが2024年3月末まで埼玉県の戸田市で行われていた。2023年11月に戸田市内のパイロット校で試行を始め、同年12月から同市内の公立小学校12校、同中学校6校の計約1万2000人の児童生徒のデータを分析対象に、「不登校予測モデル」構築の実証をした。事業はこども家庭庁の「こどもデータ連携実証事業」として戸田市が受託し、内田洋行、PKSHA Technologyグループとともに進めたものだ。
不登校リスクモデルの目的は学校現場での「プッシュ型支援」につなげること。いち早く不登校の兆候がある児童生徒を把握し、教員が事前に支援する。自らSOSを発信できない児童生徒に対しても、先手を打って手を差し伸べる。経験の浅い教員でも支援のきっかけを得られる。
一方で個人の、それもネガティブと捉えられる傾向を予測する取り組みは、データの取り扱いだけでなく判定結果の利用について細心の注意が必要だ。どのような取り組みだったのか。
AIは精度を高める手段
「既に不登校になってしまった子供を再度登校させるのは非常に大変。対応に苦慮する前にデータで予測して先手で支援をする。AIはその精度を高める手段」。戸田市教育委員会事務局の杉森雅之教育政策室担当課長兼主席指導主事はこう話す。AIはあくまでも教員を補助するものであり、判断を代替するものではないということだ。
不登校を予測するモデルとはいったいどのようなものか。まず不登校リスクがどのように示されるのか見てみよう。教員が閲覧する教育ダッシュボードに、学校名、学年、組、氏名などとともに「不登校リスクスコア」を表示する。不登校リスクは色分けされており、リスクスコアが80超だと赤で表示される。赤に近い色ほど不登校のリスクが高いと予測された児童生徒になる。なお児童生徒に関するデータの利用に際しては、保護者同意の下で実施されており、オプトアウトで事前に除外もできる。
不登校リスクスコアからさらに深掘りし、高リスクと判定された児童生徒における授業の理解度についてのアンケート結果などを確認できる。こうした画面を閲覧できる権限を持つのは各学校の校長および教頭といった管理職のみだ。得られた結果をいかにプッシュ型支援に結びつけるかは各学校の運用に任されているという。