1994年、筆者は幸運にも、Modem Mediaに34人目の従業員として入社する機会を得ました。同社はごく初期から商用ウェブサイトの立ち上げにあたっていた企業で、クライアントにはAT&T、MasterCard、放送局のCBS、ビール会社のCoors Brewing Company(当時)などが名を連ねていました。当時のウェブ業界は活気づいていて、「Mosaic」ブラウザの登場と、それに続く「NetScape Navigator」のリリースにより、人とのコミュニケーションやつながりかたが一変した、刺激的な時期でした。それから20年がたち、多くのテクノロジーがわれわれの行動を劇的に変えてきました。考えてもみてください。このたった20年の間に、どれだけの新しい広告手法を目の当たりにしてきたでしょうか。広告手法の種類には、枚挙にいとまがありません。

でも、これだけさまざまな技術の進歩があったにもかかわらず、デジタルマーケティングが人の予想を裏切るような大幅な変化を遂げたかというと、そうとは言えません。バナー広告と有料検索は今でも盛んに利用されており、デジタル広告では一番息の長いタイプであるがゆえに、相変わらずデジタルマーケティング予算の多くを占めています。ビッグデータやクラウドアーキテクチャー、プログラマティックバイイングといった新技術はデジタルメディア枠の売買方法に影響を与えているかもしれませんが、これらの手法の長期的な意義については、今はまだ検証中の段階です。

以上を踏まえ、この記事では20年間のデジタルマーケティング経験で筆者が学んだ意外な知見やカギとなる教訓を、みなさんにお教えしましょう。これらがみなさんの目標達成に役立つよう祈っています。

まずは明確で測定可能な目標を掲げよう

そんなことは言われるまでもない、とお思いになるでしょうね。でも実際に、頭の切れる人たちが立ち上げるキャンペーンの中にも、測定可能なマーケティング目標が設定されないまま始まってしまうものが数え切れないほどあるのです。そして、測定できないものは管理もできません。つまり、明確で測定可能な目標がないデジタルマーケティング・キャンペーンは、最初から失敗が決まっているも同然なのです。

人は感情でモノを買い、後で理由付けする

注目に値するだけの理由を提示しない限り、誰もあなたの商品やサービス、ブランドには見向きもしません。自分たちの製品やサービスがライバルよりもいかに優れているか、そんな理屈を並べた売り文句を繰り出す前に、あなたの企業が掲げる崇高な意義を説明し、顧客の共感を得られるよう努めるべきです。顧客が感情レベルで企業に思い入れを抱いてくれるように仕向ければ、なぜその企業のモノを買うのか、という理由付けは顧客のほうで勝手にやってくれます。

「人は『何を』ではなく『なぜ』に動かされる」

サイモン・シネック氏がかの有名なTEDトークで述べたこの言葉は、筆者の心の奥底に響きました。明確に定義されたミッションと目的(すなわち「真に重要な方向性」)を持つ企業が、万人向けの便利な製品やサービスを販売するだけの企業よりも人を引きつけるのは世の常です。

「できる」からといって「やるべき」とは限らない

テクノロジーが新たに進歩するたびに決まって発生するのが、「バスに乗り遅れるな」期です。人々はこの時期、「なぜその新技術を取り入れるのか」という疑問を抱くことなく「どれだけ早くこれをモノにできるだろう?」という1点に夢中になってしまいます。「われわれはこのサイトで何を実現したいのだろう?」という当たり前の問いを自らに投げかけることなく、何はともあれウェブサイトを立ち上げてしまう企業が本当に多いのです。今の流行は、プログラマティックバイイングとリターゲティングでしょうか。サイトを訪問しただけなのに、ここぞとばかりアグレッシブなマーケティングを仕掛られたら、その企業を敬遠してしまう人だっているでしょう。そうして離れていく将来の顧客がどれだけいることか。

「ほかの連中が気づいてない、唯一無二のチャンスを見つけたかい?」

PayPal創業者のピーター・ティール氏によるこのすばらしい問いかけは、実際に発せられることはまれながら、何よりも重要な質問です。大成功を収めた企業はどこも、市場においてこの「唯一無二のチャンス」を見つけ、それを生かし、利益を生むビジネスに成長させることに全力をつぎ込んでいます。

以上にご紹介した教訓の中で、真に意外だと感じたのはどの点でしたか? 技術的な話ではないので、デジタルマーケティングに限らず、あらゆるタイプのマーケティングに簡単に取り入れられるのではないでしょうか。最新かつ最高の技術的ソリューションを誰かが大々的に宣伝しているのを聞いたとしても、採用には用心を重ねることが肝心です(そもそも採用するべきなのかという問題もあります)。どれだけテクノロジーが変化しても、あなたを成功に導くのは最新技術以外の要素なのですから。

何しろ、直接対決しているライバルもあなたと同様、最新技術にはアクセス可能なわけで、技術以外のところで勝負が決まるのは言うまでもありません。優れたデジタルマーケティング・キャンペーンは、企業がはっきりと照準を見定めた末に生まれるものです。どんなデジタル/テクノロジーの革新が市場に登場したとしても、あなたが成功できるかどうかは、狙いを定められるかにかかっています。最新サービスの営業マンがどれだけ売り文句をまくし立ててきたとしても、すべてを一撃で解決してくれる「魔法の銃弾」など、今までも存在しませんでしたし、そんなものはそもそもないのだということを忘れないでください。

5 Surprising Lessons from the Past 20 Years of Digital Marketing|Inc.

Bill Carmody(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)

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