阪急東向日駅(京都府向日市)の西口改札を出ると、バスやタクシー乗り場のある小さなロータリーが目に飛び込む。バス乗り場の頭上には、雨よけに青と白のツートンカラーのほろが張られ、どこか懐かしい風景が広がる。

 京都出身のロックバンド、くるりは2000年にリリースした「チアノーゼ」という曲の中で、この駅への愛をかたっている。

 ♪夕暮れ前の東向日駅梅田方面行きのホームが好きだ 本当に好きだ

 駅舎はノスタルジックな三角屋根が特徴的で、こちらも「昭和」を感じさせる。2003年に開業した隣駅の洛西口駅(京都市西京区)が周辺のイオンモール京都桂川や商業施設の開発とともに高架化され、近代的なたたずまいに変ぼうしたことと比べると、ギャップを感じる。

 東向日駅から約600メートル離れたJR向日町駅に目を移せば、大がかりな再開発事業が進行中。4年後、駅東口に36階建ての高層タワーマンションや、店舗・オフィスなどが入居する駅直結の5階建てビルが完成する予定だ。

 向日市の中心市街地として栄えてきた東向日駅。1日の平均乗降客数は2013年に1万4300人いたが、洛西口駅へ人の流れができた影響もあり、2023年には1万1500人と20%減った。

 地元の寺戸区で区長を務める岡﨑雄至(かつよし)さんは、往時のにぎわいをなつかしむ。

 「昭和40年代は人通りが多く、地元の商店街が頑張って、まちの活性化の力になっていた。乙訓じゅうから人が集まり、商業活動の中心だった」

 だが、時代とともに店は歯抜けのようになり、駅前で長い間存在感を示したイオン系の大型スーパーや、市場を前身とするスーパー「ライフシティ東向日」が近年姿を消した。

 「阪急沿線の中で東向日は取り残されている」

 そう危機感を訴える岡﨑さんが「チャンス」ととらえているのが、京都向日町競輪場(向日市)の敷地で2028年秋の開業をめざす9千人規模の「京都アリーナ」(仮称)。東向日駅は徒歩で15分ほどの最寄り駅となる。

 アリーナはプロバスケットボール・Bリーグの京都ハンナリーズのホームゲーム会場やコンサート、イベントなど多用途で、集客や収益性を重視した「ハコ」になる。京都府が建設を進めるこの大規模施設を、駅前の再開発やまちづくりの起爆剤にしようと自治体や業者、住民はそれぞれに思惑を抱く。

 阪急電鉄も当然、アリーナのゆくえを意識している。嶋田泰夫社長は「あれだけの大きな施設ですからね」といい、言葉を継いだ。

 「昔は

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駅前開発で水面下の動きが
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