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事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

外国人の脱退一時金制度改善を含めた年金制度改正法案が国会提出:滞在中や再入国許可付き出国の場合に支給不可能に

滞在中や再入国許可付き出国の場合に支給不可能に

外国人の脱退一時金制度改善を含めた年金制度改正法案が国会提出

年金制度改正法案を国会に提出しました|厚生労働省

令和7年5月16日、外国人の脱退一時金制度改善を含めた年金制度改正法案が国会提出されました。厚生労働省のHPに資料が掲載されています。

外国人の脱退一時金」制度の抱える問題点については令和5年からまとめていますが、極限まで簡単に言うと、将来日本に財産も無く生活能力も無い外国人・元外国人が増え、生活保護が増える危険が高くなることが予想される事を突き止めたので、制度改善に動いている方々の働きかけがいよいよ実ろうとしている、ということです。

以下などで概要を整理しています。

国民年金法附則・厚生年金保険法附則の改正で再入国許可

外国人の脱退一時金制度改善、国民年金法附則、厚生年金保険法附則

第217回国会(令和7年常会)提出法律案|厚生労働省

該当する規定は国民年金法附則・厚生年金保険法附則です。

この規定の改正で外国人が「住所を有する」場合のみならず「滞在中」の者や、「再入国許可を受けた者」が脱退一時金の支給を受けることができなくなりました。

まずは現行法の該当規定から。

国民年金法 附則

(日本国籍を有しない者に対する脱退一時金の支給)
第九条の三の二 当分の間、保険料納付済期間等の月数(請求の日の前日において請求の日の属する月の前月までの第一号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間の月数、保険料四分の一免除期間の月数の四分の三に相当する月数、保険料半額免除期間の月数の二分の一に相当する月数及び保険料四分の三免除期間の月数の四分の一に相当する月数を合算した月数をいう。第三項において同じ。)が六月以上である日本国籍を有しない者(被保険者でない者に限る。)であつて、第二十六条ただし書に該当するものその他これに準ずるものとして政令で定めるものは、脱退一時金の支給を請求することができる。ただし、その者が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 日本国内に住所を有するとき。
二 障害基礎年金その他政令で定める給付の受給権を有したことがあるとき。
三 最後に被保険者の資格を喪失した日(同日において日本国内に住所を有していた者にあつては、同日後初めて、日本国内に住所を有しなくなつた日)から起算して二年を経過しているとき。

厚生年金保険法 附則

(日本国籍を有しない者に対する脱退一時金の支給)
第二十九条 当分の間、被保険者期間が六月以上である日本国籍を有しない者(国民年金の被保険者でないものに限る。)であつて、第四十二条第二号に該当しないものその他これに準ずるものとして政令で定めるものは、脱退一時金の支給を請求することができる。ただし、その者が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 日本国内に住所を有するとき。
二 障害厚生年金その他政令で定める保険給付の受給権を有したことがあるとき。
三 最後に国民年金の被保険者の資格を喪失した日(同日において日本国内に住所を有していた者にあつては、同日後初めて、日本国内に住所を有しなくなつた日)から起算して二年を経過しているとき。

国民年金法附則・厚生年金保険法附則の改正で「滞在するとき」「再入国許可を受けているとき」には請求事由から除外されました。いずれの改正法も以下の同じ規定に変更となっています。

一 日本国内に滞在するとき

三 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号(新設))第二十六条第一項の規定による再入国の許可(同法第二十六条の二第一項(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)第二十三条第二項において準用する場合を含む。)又は第二十六条の三第一項の規定により当該許可を受けたものとみなされる場合を含む。)を受けているとき

また、いずれの法律も、上記の当該条項で従来3号だった規定は、必要な変更を加えた上で4号にスライドしています。

この変更は昨年の厚労省の社会保障審議会年金部会で示された方針と一致しています。

外国人で「日本国内に滞在中の者」「再入国許可を受けた者」が脱退一時金の支給を受けられなくなった

外国人で「日本国内に住所を有するとき」ではなくなっても、自治体や国が転出先を追跡するということではないので、「そのまま日本国内に滞在されてしまった場合は?」というケースに対応できない規定だったものが改善されることとなります。

また、令和4年に関してですが、脱退一時金受給者のうち、再入国許可を受けた者は全体の4分の1にものぼっていました。そのうち、生活保護の受給ができる在留資格に該当する「永住者」、「日本人の配偶者」、「永住者の配偶者」、「定住者」、「特別永住者」は11.5%でした。

在留外国人のうち、「永住者」の資格の者は右肩上がりで増えているので、この制度改善によるインパクトは現状の数字から想像するものよりも遥かに大きいということが言えます。本当は「そこから日本国籍に帰化した者」まで追跡できるといいのですが……

ちなみに、社会保障審議会では一部委員から永住者への脱退一時金の支給について異議が呈されており、代替案として脱退一時金相当額の受領の権利を確保することが提案されていましたが、今回の改正には反映されていないようです。
※重要な事なので明確化のため追記:従来法でも永住者は「日本国内に住所を有するとき」に該当するはずなので欠格事由に該当しているはずが、結局海外で生活するに至った者との峻別もせずに永住資格を維持したまま脱退一時金が支給されることがあり得るのが当然視されていたのは意味不明である。

関連した話として、永住者の在留資格をもつて在留する者が、入管法に規定する義務を遵守せず、又は故意に公租公課の支払をしない場合に永住資格の取消事由となることや、一定の罪を犯して拘禁刑に処せられた者も明示的に取消事由となることが令和6年法律第60号によって規定、公布されました。

この法律が施行されれば、野放図な脱退一時金の申請や外国人の生活保護措置への歯止がかかることになります。

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