専用グラスなし、裸眼で3Dコンテンツが楽しめる3Dモニター。昨今じわじわ来きていますが、一般に普及するのは難しいと感じています。
少なくとも今はまだ難しい。まず3Dエフェクトによって、モニターの価格がはちゃめちゃに高いから。そして3D対応ゲームタイトルは、(現状では)まだまだ限りがあるからです。
Samsung(サムスン)の3Dモニター「Odyssey 3D」を発売前に触ってきた米GizmodoのKyle Barr記者。
改めてじっくりレビューしたみたものの、感想は変わらず…。やっぱり結局は何をプレイするかなんですよ。以下Barr記者のレビュー翻訳です。
ちなみにOdyssey 3Dの直販価格は、2,800ドル(約41万3000円)です…。
3Dディスプレイというコンセプトは、一時期完全に死亡状態にありました。が、昨今それが復活してきています。SamsungからOdyssey 3Dが登場。27インチの2,000ドル超えモニターです。高額な理由は、3Dグラスなしで3D映像を見ることができるから。
先にシメを言ってしまうと、正直モノ自体はいいし、もっと好きになりたい気持ちはあります。あるのですが、いかんせんこの高価格に納得できるかと言われると…。Nintendo 3DSが好きだったから…では、この価格は出せない!
3D効果自体には大満足

先月、一足先にショートビューしたときから、Odyssey 3Dいいなとは思っていました。いいなとは思いつつ、モニターとしては厄介な代物だとも感じています。
なぜなら、3D効果を無視すると、このモニターは4K IPS液晶ディスプレイでリフレッシュレート最大165Hzで、色味がそこそこきれいなだけだからです。そういうディスプレイなら500ドルくらいで買えます。


それに4倍の価格を出すのは、レンチキュラーレンズ搭載で、左右の目にそれぞれ異なる画像を送って実現する3D機能。それだけのためです。アイトラッキング技術採用で、画面の真正面にいなくても3D効果を見ることができます。
価格の大部分が乗っている3D効果ですが、これ自体にはとても満足。Nintendo 3DSでちょっと角度変えちゃうと3D効果を得られないのと違って、Odyssey 3Dには死角なし。どこから見ても3D体験できます。
実際にゲームをプレイすると、本当に3D。飛び出しています。アイトラッキング技術のおかげで、より正確に奥行きが表現されており、画面を飛び出してモノが見えます。キャラや雪が飛び出しています。
ですが、例えばバトルシーンで自分が殴られたような気がするかというと、そこまではなし。3D効果では画力・表現力が高まったように感じます。時に3Dすぎて違和感があるほど。とはいえ、この3D体験、確かに夢中になりますね!
3D体験には制限が多い
ただ、この3D体験をするまでがちょっと面倒。モニターをパソコンにつなぎますが、3D発動のためには「Reality Hub」という専用ソフトをインストールする必要あり。これ、Microsoft StoreかSamsungのサポートページから入手可能。
しっかり3D体験できるのは対応コンテンツのみ。3D映画やコンテンツ保護がかかっているプラットフォームでは、3D発動できません。3Dじゃなくて通常の2D観覧はできますが、それだとなんのための高額モニターなのかという話になるわけで…。
さらに、Odyssey 3D発売時に3D対応しているゲームタイトルは、現在14作品のみ。
『The First Berserker: Khazan』
『Lies of P』
『Stray』
『ドラゴンボールZ カカロット』
『Palworld / パルワールド』
『リトルナイトメア2』
『スポンジ・ボブ:ザ コズミック シェイク』
『龍が如く 維新!極』
『フィスト 紅蓮城の闇』
『Wigmun』
『ディズニー エピックミッキー:Rebrushed』
『The Smurfs Dreams』
『グランド・セフト・オート:トリロジー:決定版』(3部作)
『Psychonauts 2』なども対応予定ですが、発売時には間に合わず。『The First Berserker: Khazan』のみ、Odyssey 3Dを念頭に開発されています。
コンテンツ・プラットフォーム以外で、ハードにも制限があります。3D体験するには、パソコン側にNvidia RTX GPU搭載の必要あり(レビューではGeForce RTX 5090搭載のデスクトップを使用したので、3D効果を付けた上で、ゲームのフレームレートにも問題ありませんでした)。
まだ初期段階という感じは否めない
Odyssey 3Dの画面は確かに3D体験できる。でも、問題なのは、それを体験できるコンテンツをどれだけ所持しているかどうかです。
例えば、私はXbox Game Passで『Palworld / パルワールド』をプレイできるのですが、パソコンでプレイするゲームを検知するはずのReality Hubが、なぜか『Palworld / パルワールド』は検出できず。結局、プレイするにはReality Hubを介さず、つまり3D効果なしでやるしかありませんでした。これじゃ意味がない。
そもそも現時点では3D対応タイトルが少ない上、対応タイトルすらうまく検出できないのでは致命的。
一方で、3Dコンテンツではないもの(YouTubeなど)で、3D発動しますか?というメニューが表示された謎挙動も…。試しに「はい」にしてみると、Reality Hubが起動されるものの、結局エラーメッセージが出て終わり。どうやらソフト面が今ひとつうまいこといっていないようですね。
やはり時期尚早か

結局、じっくりフルレビューしてみても、考えは変わりませんでした。
始まりは常に難しいものです。テック業界におけるアーリーアダプターは、大枚を叩くことで一足先に最新技術を体験できますが、それが必ずしも価格に見合う体験とは限りません…。今後対応ゲームは増えるかもしれませんが、このモニターのニッチさを考えると、どこまで増えるかはちょっと懐疑的。
Odyssey 3Dを人にオススメするかといわれると、正直厳しい。コンセプトの域を多少出る程度に過ぎないからです。
ただ、3Dモニターというものにより多くのコンテンツが対応し、低価格が実現され、もっと普及したらいいのにとは思います。Odyssey 3Dがその始まりのきっかけになってくれたらと願っています。
いいところ:3D効果は確かで、よりアニメの動きやゲームの表現力が高まる。目のトラッキング技術は斜めから見ても大丈夫。IPSディスプレイの照度良し
残念なところ:高い、高すぎる。Reality Hubが一部のプラットフォーム(Xboxなど)で機能せず。3Dが楽しめるコンテンツは限定的