アイソレーション種目の再評価が進む理由

筋群やムーブメントの種類、使用する器具など、トレーニングを分類する方法はさまざまだ。だが、もっとも基本的な分類方法があるとすれば、それは複数の関節を使う「コンパウンド種目(多関節運動)」と、一つの関節の動作だけで行う「アイソレーション種目(単関節運動)」とに分けることだろう。

それぞれ概念は単純明快だ。

アイソレーション種目:一種類の筋肉だけを集中的に鍛えるトレーニング
コンパウンド種目:
身体の複数の部位を同時に鍛えることを目的とするトレーニング

近年のジム界隈では、アイソレーション種目に対する注目がまた高まりつつある。ただし、一度に一種類の筋群だけにフォーカスすることの効率性を疑う意見が根強いことも確かだ。アイソレーション種目にいくら取り組んだところで、結局はコンパウンド種目と同様に複数の筋肉を動員することになるという声もある(懸垂をやりながら上腕二頭筋の燃焼を感じたことのある人なら分かる感覚だろう)。つまり、アイソレーション種目を敢えて取り入れても大した意味はない、という考え方だ。

実際、そのような意見にも一理あるとはいえる。だが、それでもアイソレーション種目の恩恵を見過ごすのは得策とはいえない。全身を鍛えるトレーニングでは疎かにされてしまいがちな細部をきっちり鍛えることができるのがアイソレーション種目のメリットだからだ。

アイソレーション種目とは何か?

単一の筋群をターゲットにして、単一の関節のみを使って行うトレーニングのことを「アイソレーション種目」と呼ぶ。たとえば、カーフレイズ、バイセップスカール、トライセップスエクステンション、レッグカールなどが、アイソレーション種目の定番といえる。

効率だけに目を向けるのであれば、納得できないのも無理はない。特に、複数の筋肉を同時に動かす「コンパウンド種目」の信奉者であればなおさらだろう。定番のコンパウンド種目としては、デッドリフト、スクワット、ベンチプレス、ランジ、プルアップ(懸垂)などが挙げられる。より複雑な動作が求められるエクササイズであり、徐脂肪体重(体重から脂肪を引いた値)に対する影響も大きく、カロリー消費量も高い。そして、筋肉および筋力の全体的な増強にも深く関与する。

アイソレーション種目のメリット

とはいえ、アイソレーション種目を無駄だと決めつけてしまうのは短絡的だ。コンパウンド種目と比較して、アイソレーション種目が優れた点は数多くある。競技に特化したアスリートでない人々にとっては、その恩恵はさらに増す。

何よりも、目的に応じて特定の筋肉や筋群にフォーカスを当てて鍛えることができる点が大きい。シャツの袖をパンパンにする上腕二頭筋や、ロードレースのライバルを威嚇する屈強なふくらはぎ、ビーチバレーで強烈なサーブを決めるのに役立つロブスターの爪のような上腕三頭筋など、アイソレーション種目によって見事な筋肉を作り上げることができるのだ。

単一の筋肉に絞り込んだエクササイズには、それなりの意味があるということだ。個別の筋肉を集中的に鍛え上げることで、肉体のアンバランスな部分を解消しながら弱点を克服できるという点は、より重要な効果として覚えておきたい。

また、スポーツ障害(スポーツによって関節、靭帯、腱、骨などに繰り返し外力が加わることで引き起こされる障害のこと)のリハビリや、筋力的な弱点を補うのにも役立つ。

日々のトレーニング、アスリートとしての寿命、日常生活に求められる機能性、それらを含む総合的な身体機能の向上が、アイソレーション種目によって可能になるということだ。

アイソレーション種目を取り入れるための方法

トレーニング計画の完成に向けて、細部を磨き上げるのがこのアイソレーション種目の役目だと考えてほしい。

トレーニングの中心をコンパウンド種目で構成しながら、必要に応じてアイソレーション種目を戦略的に取り入れるのが望ましい。上記に挙げたメリットに加え、特定の筋群のトレーニング量を増やすのにもアイソレーション種目が役立つ。

アイソレーション種目は、筋肥大の実現に向けたゲームチェンジャーになり得る。トレーニングの目的は個々によって異なるだろうが、アイソレーション種目を行えば、目標達成に間違いなく近づけるはずだ。

主なアイソレーション種目

バイセップスカール

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効果の実証された定番エクササイズの筆頭がこれだ。上腕二頭筋(バイセップス)に焦点を絞って鍛え上げる。動かすのは肘関節だけだ。肘関節を屈曲させることでウエイトを持ち上げる。

やり方

  1. 両足を腰幅に開いて立ち、両手にダンベルをニュートラルグリップ(手のひらは内向き)で持つ。肩甲骨、腹筋、大臀筋を引き締め、全身のテンションを高める。
  2. 肘関節だけを動かして、ダンベルをカールする(巻き上げる)。上腕は固定して動かさず、床と垂直な角度を保つ。
  3. カールする際は、手のひらが上を向くようにダンベルを内側に捻りながら行う。ダンベルが床と平行になったところが中間地点。
  4. そのままダンベルを上げ続け、上げ切った位置(トップ)で上腕二頭筋を絞り切る。
  5. コントロールを意識しながらダンベルを下ろす。

セット数 × レップ数:3セット × 片腕ずつ8~12レップ

スカルクラッシャー

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上腕三頭筋をターゲットにしたアイソレーション種目だ。先ほどのカールとは反対に、肘関節を伸ばす(伸展させる)動作を行う。

やり方

  1. ベンチに仰向けになる。背筋をまっすぐに伸ばし、肩甲骨をベンチに密着させる。腹筋と大臀筋に力を込め、両足はしっかり床につける。
  2. ウエイトがまっすぐ胸の真上にくるように押し上げていく。上腕は床と垂直か、あるいは91~92度程度の角度になるように。手首の力を緩めず、バーベルをしっかりと握る。
  3. 肘関節だけを動かして、バーベルを額の上1cmほどの位置までゆっくりと下げる。肩を突き出さないように意識し、上腕は固定したまま。
  4. バーベルをまた押し上げる(動かすのは肘関節のみ)。トップの位置で上腕三頭筋を絞り切る。

セット数 × レップ数:3セット × 8~10レップ

Source / Men's Health US
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳である。