トランプ米大統領、自動車や医薬品などに25%前後の輸入関税の可能性
Bryan Pietsch、Hadriana Lowenkron-
4月2日にも発表-医薬品と半導体の関税は1年かけて引き上げ
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企業に米国に「来る時間」を与えたいとも発言-トランプ大統領
トランプ米大統領は18日、自動車や半導体、医薬品に税率25%前後の輸入関税を賦課する公算が大きく、4月2日にも発表する可能性があると語った。
新たな関税が実際に導入されれば、トランプ氏の貿易戦争は拡大することになる。大統領は先に鉄鋼とアルミニウムの輸入に25%の関税率を賦課し、3月発効の予定を発表していた。しかし、18日の発言は新たな関税賦課の対象となる他のセクターを特定する上で、最も詳細な内容となった。
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トランプ氏はフロリダ州にある邸宅「マールアラーゴ」で、自動車関税に関して記者団の質問に答え、「それについては恐らく4月2日に話すことになるだろうが、25%の近辺だろう」と話した。
医薬品と半導体チップの輸入関税率を巡っては「25%以上になり、1年かけて大幅に引き上げられるだろう」とコメントした。
その上で、新たな関税の発表に先立ち、企業に米国に「来る時間」を与えたいとも発言。「彼らが米国に来て、ここに工場を持てば関税はない。このため、彼らに多少のチャンスを与えたい」と述べた。
19日のアジア市場では、早い時間帯に株価が全般に軟調となる場面が見られた。投資家はトランプ氏による以前の関税の脅しを交渉のための道具と見なしてきたものの、不確実性が高い状況にあって慎重姿勢を維持している。
ナティクシスのアジア太平洋地域担当チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏は、最新の関税の脅しに関する詳細に乏しいとしつつも、トランプ政権2期目の貿易戦争では、中国以外にも標的が広げられ、アジアが特に大きな影響を受けるのは明らかだとしている。
詳細は不明
新たな関税が賦課されれば、自動車産業に広範な影響が及ぶ。米国に昨年輸入された乗用車やライトトラック計800万台は米自動車販売の約半分に相当する。米国販売での輸入のシェアを踏まえると、フォルクスワーゲン(VW)をはじめとする欧州の自動車メーカーや、韓国の現代自動車などアジアのメーカーが特に大きな打撃を受けると予想される。
日本の自動車メーカーへの影響について、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)は、25%の関税賦課は2025年度のトヨタ自動車の営業利益ガイダンスの約3分の1、ホンダでは半分弱に相当すると推計している。
トランプ氏は、特定の国・地域を関税の標的とするのか、米国に輸入される全ての自動車が対象になるのかどうかは明言しなかった。また、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の下で製造された自動車が関税の適用除外となるかは不明だ。
デトロイトの自動車メーカーを代表する米自動車政策評議会(AAPC)は、USMCAの要件に順守して北米で製造された自動車は新たな関税の対象から除外すべきだと主張している。
業界専門家やロビーグループ、企業幹部らは自動車産業に新たな高関税が賦課された場合、消費者にとって値上げとなり、業界のコストも大きく押し上げられると警告してきた。
他方、半導体チップで最もエクスポージャーが大きいのはマレーシアやシンガポールなどだ。
他国・地域は、トランプ政権が関税発動に踏み切れば、速やかに報復措置を講じ、米共和党が優勢な州で生産された物品を関税賦課の標的にする方針を示している。
トランプ氏はかねて、世界中の国・地域との貿易不均衡是正の取り組みの一環として他の一連の関税賦課の可能性を警告してきた。他国・地域が米国を食い物にしていると非難する同氏は輸入関税について、産業を米国に回帰させるとともに、歳入増を図るための手段の一つと見なしている。
だが、エコノミストの多くは関税賦課が米消費者物価を押し上げてインフレ抑制の取り組みを阻害すると指摘している。
トランプ氏はさらに、国ごとに相互関税を適用し、4月初めにも実施する方針を表明。中国に対しては既に10%の追加関税を賦課したほか、カナダとメキシコからの輸入品に対する25%の関税賦課は少なくとも3月4日まで延期した経緯がある。
林芳正官房長官は19日午前の記者会見で、自動車関税への対応について問われ、今後明らかになる措置の具体的な内容や日本への影響を「十分に精査しつつ、適切に対応する」との考えを示した。米政府に対しては、日本における自動車産業の重要性を踏まえ、問題提起してきているとも述べた。
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原題:Trump Floats 25% Tariffs on US Auto, Drug, Chip Imports (3)(抜粋)