朝日新聞社は12月21日、自社フォトアーカイブのTwitterアカウントに掲載した戦時中の写真について、合成されたものだったとして、謝罪した。
@oldpicture1900 とても貴重な写真ですね!こんな鉄兜を持って通勤されていたとは…考えさせられます。弊社には、1944年に増産のため工場へ出勤する女子挺身隊の写真が残っていました。「男たちは戦場に駆り出され、国内の労働力は不足していた」とありました。
ツイートは、12月18日のもの。「朝日新聞社フォトアーカイブ」のTwitterが、戦時中の写真をツイートした別のアカウントに対して、「とても貴重な写真ですね!」と、以下のようにリプライした。
《弊社には、1944年に増産のため工場へ出勤する女子挺身隊の写真が残っていました。「男たちは戦場に駆り出され、国内の労働力は不足していた」とありました》
この写真に対し、同じ顔をしている人物が写っていることや、顔が欠けているように見える人がいること、さらには後方の明るさや大きさに不自然な点があることから、指摘や批判が殺到。
アカウントは翌日、「戦争中に撮影され、写真に不自然な点がありました。確認不足、説明不足のまま掲載してしまいました。申し訳ありませんでした」と謝罪した。
さらに朝日新聞社は12月21日夜、コーポレートサイトに「説明とお詫び」を掲載。
「弊社で検証した結果、構図などから、戦時中に撮影し合成された写真と判断しました」として、以下のように謝罪。ツイートのコメントを取り消す、とした。なお、ツイート自体は午後8時40分現在、残されたままとなっている。
当時の様子を伝える写真としてこの写真を選び、以下のコメントをつけたことは極めて不適切なものでした。
戦時中に撮影されたものであり、撮影者や経緯は不明です。数多くのご指摘を頂いた通り、同じ顔や大きさが不自然な顔があるなど、合成であると気がつくことができる写真でした。十分に確かめずに事実であるかのような写真として投稿してしまいました。
発表によると、写真は、戦時中の写真週刊誌「アサヒグラフ」の1944年10月25日号および、朝日歴史写真ライブラリー「戦争と庶民 1940~49」(朝日新聞社・1995年)に掲載されていたという。

戦時中は政府による情報統制が進み、メディアを通じたプロパガンダの流布も行われた。朝日新聞なども当時、それに加担した歴史がある。
特に戦況の悪化した太平洋戦争後期に至っては、被害や戦果が捏造された「大本営発表」を批判的なチェックせず横流しし、政府と一体化し、宣伝機関となり、結果として戦争の長期化や被害の甚大化などの一因を担ったと指摘されている。
こうした中で、メディアに掲載された写真についても、戦意高揚のため、戦車や飛行機、また、今回の写真のように人員の数を増やすなどといった合成や修正などが施されていた。
朝日新聞社は「戦争と新聞」という連載(2008年)で自社を含むマスメディアの戦争責任を振り返っている。今回のケースではそうした歴史的背景を十分にチェックしないままツイートしたため、2020年のTwitterで戦時プロパガンダとメディアの加担のあり方を示すことになってしまったと言える。
なお、BuzzFeed Newsは12月21日午前、朝日新聞社に対し写真掲載の経緯や撮影時の背景、さらに戦時中の写真を扱うリスクに関する見解などを問い合わせたが、お詫びを掲載したとして、「恐れ入りますが、下記URLをご覧ください」と回答があったのみだった。