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イーロン・マスクはSF小説を未来の青写真とするべきではない…それは社会の不安を反映していることが多い

Sarah Perkel原文翻訳:Ito Yasuko、編集:井上俊彦

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チャイナ・ミエヴィル
チャイナ・ミエヴィルは、サイエンス・フィクションを未来の青写真として考えるべきではないと述べた。
Colin McPherson/Corbis via Getty Images
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  • チャイナ・ミエヴィルは、SFとホラー、ファンタジーを融合した「ニュー・ウィアード」小説で知られている。
  • イーロン・マスクについて聞かれたミエヴィルは、SFはテック業界の一部が考えているような「青写真」ではない、と述べた。
  • ミエヴィルはテッククランチに対し、SFは現在の不安を反映していることが多いと述べた。

チャイナ・ミエビル(China Miéville)によると、サイエンス・フィクション(SF)は、イーロン・マスク(Elon Musk)やシリコンバレーの他の人々が考えているような、ロードマップでないという。

「シリコンバレーが長きにわたってSFに関心を抱いてきたことは周知の事実であり、目新しいことではない」と、ミエヴィルはテッククランチ(TechCrunch)のインタビューで述べた。

「そしてある程度、これは社会学的な側面もある。文学オタクの世界とコンピューターの世界などが交差している」

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ミエヴィルは、「ニュー・ウィアード」というジャンルで知られており、ヒューゴー賞など数々の賞を受賞している。彼は、SF作品がテクノロジー業界の人々の間で非常に人気があるのは、シリコンバレーに浸透している奇妙でユニークな哲学のおかげだと語る。

「シリコンバレーのイデオロギーはいつでも、風変わりで、気持ちの悪い、自由至上主義とヒッピー精神と、自然派テック理想主義のミックスだ。#NotAllSiliconValley(シリコンバレーのすべてがそうだという訳ではない)のハッシュタグを付けつつも、実際には大部分がそうだ」とミエヴィルはテッククランチに語った。

テック業界の大物、例えばイーロン・マスクが、火星に移住しテラフォームする火星3部作でよく知られているキム・スタンリー・ロビンソン(Kim Stanley Robinson) らの作品を「一種の未来の青写真」として扱っていることについて聞かれ、ミエヴィルはロビンソンに対して「深い悲しみを禁じ得ない」とだけ述べた。

ロビンソンは、ミエヴィルのコメントに感謝しているとBusiness Insiderに語った。

「2000年代初頭の探査機の調査結果により、火星の地表が1990年代に考えられていたよりもさらに有害であることが明らかになった今、火星移住を人類のプロジェクトとして実現可能だと考える悲観的な夢想家はほとんどいない」とロビンソン氏は述べた。

「しかし、科学的調査結果を無視することは、特定の空想家にとっては日常茶飯事だ」

マスクは以前、アイザック・アシモフ(Isaac Asimov)の『ファウンデーション(Foundation)』3部作や、ダグラス・アダムス(Douglas Adams)の『銀河ヒッチハイク・ガイド(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy)』 への興味を示しており、自身の立ち上げた企業のAIモデルであるGrokを、この本に登場するスーパーコンピューターをモデルに開発した。このスーパーコンピューターは、「生命、宇宙、そして万物」に対する答えを導き出す(それは「42」だった)。

テック界の他のリーダーらも、このジャンルには興味を示している。ビル・ゲイツ(Bill Gates)はお気に入りのSF小説を自身のブログにまとめており、ロビンソンの『未来省(The Ministry of the Future)』もそのリスト入っている。ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)に関しては、映画「スター・トレック BEYOND(Star Trek Beyond)」への、カメオ出演にまでこぎつけた。

フィクションは、いくつかのケースで科学による実現の前兆として機能してきた。例えば、初代「スター・トレック」に登場するコミュニケーターは、その後1990代には現実世界で折り畳み式携帯電話として具体化された。だがミエヴィルは、シリコン バレーの人々は、インスピレーションの源を厳選する動機があると考えている。

「SFのどんな要素に、こうした人々は興味を持つのだろうか」ミエヴィルはテッククランチに語った。

「彼らの製品がアーシュラ・ル=グウィン(Ursula Le Guin)の『オールウェイズ・カミング・ホーム(Always Coming Home)』のような展望に『インスピレーションを受ける』ことはないだろう。それはコモディティの圧力から脱却する話だ。それは彼らにとっては何の役にも立たない」

火星への移住のような高尚な夢が、地球上の問題に対処するよりも理にかなうためには、ある程度の「社会的、個人的錯乱」が起こっていなければならないとミエヴィルは考えている。

「だがそれは『これは非常におもしろい小説だ、こんな考えを提供してくれる、これが何かの仕事をするきっかけになるかもしれない』と言うのではなく、『そうだ、それこそが我々のすべきことだ』という考え方だ。身の回りで、世界がトラブルに陥っている時に? よほど笑えるのでなければ、それは恐ろしいことだ」とミエヴィルは述べた。

この記事の公開に先がけ、Business Insiderはコメントを求めたが、ミエビルとマスクからの回答はなかった。



サイエンス・フィクションは、ホラー同様、時代特有の思潮、そして不安を反映しているジャンルだ。SFは先を見るための窓ではなく、「今」の世界を論じる方法だとミエヴィルは述べた。

「いつでも、その時の世界の反映だ」とミエヴィルは付け加えた。

「熱にうなされたときに見る夢のようなもので、いつでも社会学的文脈のことや、今の不安を表現したものだ。だから、『未来について』のカテゴリーであるかのように扱うのは間違っている」

SFは、予言として機能するように書かれたものではないとミエヴィルは述べた。そしてもちろん、現代の人々の行動に対する責任もない。

「サイエンス・フィクションのせいにするのはやめよう」とミエヴィルはテッククランチに語った。

「この手の反社会病質を引き起こしているのは、SFではない。月並みな言い方で申し訳ないが、そうしているのは資本主義だ」

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