- 8月23日(現地時間)、アメリカのウィスコンシン州ケノーシャでジェイコブ・ブレークさん(29)が警官に背後から撃たれた。多くの人々がその様子を捉えた動画を目にしている。
- ブレークさんは「8か所」を撃たれ、腰から下が麻痺していると、ブレークさんの父親が25日に明かした。
- 州司法省は現在、この事件を調査していて、事件に関与した2人の警官は休職扱いとなっている。
- 事件を受け、アメリカでは警察の残虐行為や人種差別に対する抗議の声が再び高まっている。デモ参加者たちはケノーシャだけでなく、ニューヨーク、ロサンゼルス、ミネアポリス、その他あらゆる場所での正義を求めている。
ウィスコンシン州ケノーシャで29歳の黒人男性ジェイコブ・ブレークさんが警官に撃たれた事件を受け、アメリカ各地で再び抗議の声が高まっている。
6人の子どもの父親であるブレークさんは命を取り留めたが、腰から下が麻痺していると、ブレークさんの父親が25日に明かした。
ウィスコンシン州司法省の犯罪捜査部は現在、警官が関与したこの事件を調査している。
州南東部にある人口約10万人の都市ケノーシャはいかにして人種間の緊張の中心地となったのか、時系列で振り返ろう。
※日時は全て現地時間。
8月23日
- 午後5時11分、ケノーシャ市警察の警官たちが「家庭内トラブルの通報」に応答。
- ブレークさんは、2人の女性の間のけんかを止めようとしていたと、目撃者たちはWinona Daily Newsに語った。
- 動画の直前に何が起きたのかは分からない。発砲する前に、警官がテーザー銃を使い、ブレークさんと格闘していたと話す目撃者たちもいるが、まだ確認されていない。
- 目撃者の1人であるレイシーン・ホワイトさんは、窓の外を見たら、警官がブレークさんにヘッドロックをかけ、胸を殴り、腕を引っ張って、テーザー銃を使ったのを見たとCNNに語った。
- SUVに乗り込もうとするブレークさんを2人の警官が追い、そのうちの1人が背後から銃を撃つ様子を、ホワイトさんが撮影していた。
- 動画はブレークさんが運転手席のドアを開け、車に乗り込もうとする様子を捉えている。後部座席にはブレークさんの3人の息子たちが乗っていた。
- 警官の1人がブレークさんのシャツを引っ張り、背後から撃った。
- ホワイトさんを含め、目撃者たちは少なくとも7回、銃声を聞いたと話している。
- 警官たちは現場でブレークさんに応急処置を施し、ブレークさんはその後、午後5時30分頃、ミルウォーキーにあるフロエッドタート病院に搬送された。重体だった。
- 人権弁護士として有名なベン・クランプ(Ben Crump)氏は午後9時24分、ホワイトさんの撮った動画をソーシャルメディアに投稿し、動画は瞬く間に拡散した。
- ブレークさんが警官に撃たれたというニュースを受け、ケノーシャでは抗議デモが始まった。参加者たちはブレークさんの事件に対する正義と、警官による暴力やアメリカの構造的人種差別を終わらせるよう求めた。
- デモ参加者が車や裁判所に火を放ったり、警官隊と衝突する様子をカメラが捉えている。
- ウィスコンシン州のトニー・エバース(Tony Evers)知事は、警官に「白昼堂々と」撃たれた人物がブレークさんであることを認め、午後10時35分、過剰な武器使用を非難した。
8月24日
- ウィスコンシン州司法省の犯罪捜査部は午前2時46分、関係機関の支援を得ながら調査を行うと発表。
- ブレークさんの事件に関与した警官たちは、休職扱いとされた。
- クランプ氏は午後8時42分、ブレークさんの家族から自らが自身が代理人に指名されたとツイッターで発表した。
ケノーシャ郡の地方検事マイケル・グレーブリー(Michael Graveley)氏は、ブレークさんの事件に関与した警官を刑事告訴するには、2つの条件を満たすことが必要だと話している。
- 「1つは、いずれかの警官がこのケースで何らかの犯罪を犯したか? もう1つは、わたしたちが起きたと考える犯罪について、合理的な疑問を残さない程度に証明できるものがあるか? この2つが『イエス』と結論付けられれば、刑事告訴となるだろう」
- ブレークさんの家族の「医療費、家計費、弁護士料、子どもたちへの支援、治療費」の足しにと、人々はGoFundMeのキャンペーンに寄付し始めた。
- アスリート、政治家、活動家たちがブレークさんに対する暴力を非難。
- 午後1時58分、エバース知事は「ウィスコンシンの警察活動は、説明責任と透明性を向上させる」ことが必要だとツイートした。
- エバース知事はケノーシャに州兵を配備し、非常事態を宣言。24日午後8時から25日午前7時まで外出禁止令を出した。
- 一部のデモ参加者は外出禁止令を無視し、警官隊に向かって水の入ったペットボトルを投げつけたり、落書きをしたり、窓ガラスを割ったり、店を略奪したり、火を放つなどした。
- 警察側は、集団を追い払うためにゴム弾や催涙ガスを使用した。
- 抗議活動は州内にとどまらず、ミネアポリス(ミネソタ州)やニューヨーク、ワシントンD.C.、ロサンゼルス、デンバー(コロラド州)など、さまざまな都市へ広がった。
8月25日
- ブレークさんの父親(息子と同じ名前)は25日朝、息子は腰から下が麻痺していて、そのからだには「8か所」撃たれた痕があると、Chicago Sun-Timesに語った。
- エバース知事は午後1時22分、州兵のさらなる派遣を求め、人々に「平和的かつ安全な抗議」を呼びかけた。
- エバース知事は午後1時34分、ウィスコンシン州の非常事態を宣言した。
- さらなる抗議デモが予想される中、市当局が25日午後8時から26日午前7時まで、再び外出禁止令を出したと、ケノーシャ郡当局は午後2時4分、フェイスブックで述べた。
- ブレークさんの家族の弁護団の一員であるパトリック・サルヴィ・ジュニア(Patrick Salvi Jr.)氏は25日午後の記者会見で、「至近距離」で撃たれた弾がブレークさんの脊髄に当たり、別の銃弾が腕に当たったと語った。「腹部を撃たれた」ことで腎臓と肝臓に「損傷」を受け、「結腸と小腸のほとんどを切除しなければならなかった」ため、「長い道のりが彼を待っている」とサルヴィ氏は付け加えた。
- 同じ記者会見で、ブレークさんの母親であるジュリア・ジャクソンさんは、息子の回復を祈ってほしいと人々に呼びかけ、国としての「癒しが必要だ」と語った。
- ジム・クルーザー(Jim Kreuser)ケノーシャ郡行政官とジョン・アンタラミアン(John Antaramian)市長は、抗議活動に付随して起きた略奪や放火、破壊行為を非難する声明文を出し、午後3時23分にフェイスブックでシェアした。
- デビッド・ベス(David Beth)保安官は、午後6時15分にフェイスブックに投稿した声明文でこのメッセージを支持し、人々の恐怖やフラストレーションには共感するが、「生産的な正義への道」が必要だと強調した。
- トランプ大統領は午後7時16分、エバース知事は「ウィスコンシンに州兵を呼ぶべきだ。用意はできている。早く問題を終わらせろ!」とツイートした。
- 知事が24日にすでにそうしていることに大統領は気付いていないようだ。
- ケノーシャでは、抗議活動が3日目に突入し、午後11時45分頃には発砲が報告されている。
8月26日
- 午前4時27分、ケノーシャ市警察は3人が撃たれ、このうち2人が死亡、1人が重症で病院へ搬送されたと、フェイスブックで述べた。
- 当局は、この発砲事件がデモ参加者と、ガソリンスタンドなど地元の店を守る役目を買って出た武装した民間人の間の衝突がきっかけで起きたものかどうか、調べている。
- ケノーシャ郡管理委員会(Kenosha County Board of Supervisors)はエバース知事に対し、ケノーシャを「守り」、地域に「礼節」を取り戻すため、警察の権限を与えた1500人の州兵を早急に送るよう求める書簡を午前6時43分、フェイスブックでシェアした。
- 当局は午前7時1分、扇動者たちが標的としているケノーシャ郡裁判所は引き続き閉鎖されると発表。
- USA TodayのNick Penzenstadler記者は午後12時3分、イリノイ州アンティオーク在住の17歳の少年、カイル・リッテンハウス(Kyle Rittenhouse)容疑者が第1級殺人容疑で逮捕されたとツイートした。AK-47で抗議デモの参加者3人を撃ったという。
- タイミングをほぼ同じくして、エバース知事は現地の警察を支援するために州兵を500人増やすことを発表。
- ケノーシャ市警察のダニエル・ミスキニス(Daniel Miskinis)署長は、市の外出禁止令に従わなかった人々を厳しく批判した。「あの事件に関係した人々が外に出ていなければ、あのような状況は起こらなかっただろう」
(翻訳、編集:山口佳美)