黙秘権は「使えない武器」か 留置場から車いすで連行、異例の提訴へ

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大滝哲彰 山本逸生 遠藤美波 華野優気
【動画】取り調べを拒む容疑者を連れ出す場面=関係者提供
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 黙秘権は、この国で本当に保障されているのか。「使えない武器」になっていないか――。

 その映像は、留置場の様子を捉えていた。

 警察官が手元の自動翻訳機を口にあてて、留置場の中の男性(42)に呼びかけた。

 「取り調べの要請がありました。出ますよ」

 それまで黙秘してきた中国籍の男性は、機械が発する母国語を聞き、首を横に振った。

 警察官はこう告げた。

 「あなたには、取り調べを受ける義務があります」

 やり取りが続く。

 男性「取り調べを受けません」

 警察官「はいそうですかって、無理だから。何人かで連れて行ってもいいの?」

 男性「……」

 警察官の声は、次第にいら立ちを含んでいく。

 警察官「受ける義務があんねんからしゃあないやろ。な?」

 男性「私、(取り調べは)すべて終わってる」

 警察官「黙っているのは構いません。でも取り調べには出なさい。この国の法律で、逮捕されている人は、それに従わなければいけません」

 4人の警察官が部屋に入った。

■男性の両脇を抱えて「せーの…

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この記事を書いた人
山本逸生
国際報道部
専門・関心分野
格差、事件、労働