<ネット依存 コロナ禍の子どもたち①>
きっかけは小学6年の春休み。中学の合格祝いに与えたパソコンだった。
埼玉県の奥村幸恵(45)=仮名=の長男は、わずか1年で戦闘系のオンラインゲームにのめり込んだ。
毎晩9時。自宅のWi—Fiが強制的に切れ、ゲームができなくなると、長男は「あと30分延長して」と求めてくる。断る夫と口論になり、やがて暴れるようになった。
2階からいすを投げ落とす。居間のテレビ、台所のクッキングヒーターと、手近の物をたたき壊す…。
幸恵は髪をつかまれ、足蹴 にされた。あざが絶えず、遺書さえ書いた。
「警察を呼んでくれ」。ある夜、夫が長男を押さえながら叫んだ。幸恵は震えながら110番した。
◆多くは10~20代男性、12歳未満が増加傾向
ゲームをやめられない「ゲーム障害(ゲーム行動症)」は、2019年に世界保健機関(WHO)が国際的な疾病リストに加え、精神疾患と認められた。主な症状は不登校、暴言暴力、ゲームへの高額な課金だ。
全国有数の治療拠点である久里浜医療センター(神奈川県)では、ネット依存外来の患者は年間約2500人で、多くがゲーム障害。10〜20代の男性が中心だが、低年齢化が進む。
12歳未満は19年に115人、20年に151人、21年に219人と増えている。
名誉院長の樋口進(68)は「コロナ禍で自宅待機の時間が増え、社会のデジタル化が進んだことが背景にある。学校が支給したタブレット端末でゲームにはまる子もいる」と指摘する。
幸恵の長男も、休校になると中古パソコンを買い込み、ゲーム専用にした。別のパソコンでオンライン授業を流しながら、ゲームに没頭した。
幸恵の説得を聞き入れて久里浜医療センターを訪れたのは、今から1年半前。高校1年の秋だった。
◆アディクションからコネクションへ
治療の柱は、スポーツや食事...
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