lynx   »   [go: up one dir, main page]

衝撃事件の核心

四半世紀も監禁された息子 親の責任感と孤立の末

内部におりが設置されていたプレハブ倉庫=兵庫県三田市
内部におりが設置されていたプレハブ倉庫=兵庫県三田市
その他の写真を見る (1/2枚)

兵庫県三田(さんだ)市の住宅で、精神疾患を抱える長男(42)が20年以上にわたり一畳ほどのおりの中に閉じ込められていた。長男の腰はくの字に曲がり目はほぼ失明の状態。同居する父親(73)から相談を受けた三田市が長男を福祉施設に入所させ、兵庫県警は監禁容疑で父親を逮捕した。一家はどのような悩みを抱え、地域や行政とどう関わっていたのか。孤立した家庭への支援のあり方も問われている。

広さ1畳、食事は2日に1回

「息子が暴れる。(約25年前の)16歳のころから閉じ込めていた」

今年1月18日、父親から福祉関係者への相談をきっかけに長男と面会した三田市職員に、父親は長男を閉じ込めていた理由を明かした。おりは一軒家の庭のプレハブ倉庫の内部に設けられた。高さ約1メートルで広さは一畳ほど。市職員を前に、長男はおりの中で「体育座り」をしたまま、下半身をさらけ出していた。

父親は市職員に「精神疾患で暴れて近所から何度も苦情があり、迷惑になると考えた」と経緯を説明。おりの中にはファンヒーターや扇風機が置かれていたが、排便は床のマットの上に垂れ流し状態だった。

父親の仕事はタクシー運転手で、日々の業務は深夜まで続いた。長男は主に父親が留守の間はおりの中で過ごし、父親が帰宅後の午後10時ごろから約12時間は外に出ることを許された。父親は「2日に1回のペースでご飯を食べさせ、風呂にも入れていた」と供述する。

それでも、劣悪な環境によって長男の腰はくの字に曲がり、目はほとんど見えなくなっていた。障害者手帳を持っていたが、最近は病院で治療を受けたり、福祉サービスを頼った形跡はなかった。

転居前の大阪でも「座敷牢」

長男は父親と母親、きょうだいとの5人暮らしだったが、母親は市職員との面会当時、すでに末期がんだった。面会4日後の1月22日には、虐待を受けた疑いがあるとして、市が父親の了承のもと、長男を県の福祉施設に入所させた。母親は1月末に亡くなった。父親は4月7日に長男を監禁した疑いで県警に逮捕された。

6月19日には神戸地裁で初公判が開かれ、父親は長男が福祉施設に保護されるまでの生活実態を赤裸々に語った。

弁護士「長男の障害に気づいたのはいつごろか」

父親「2歳くらいの時」

弁護士「長男とどのようなコミュニケーションをとっていたのか」

父親「言葉が話せないのでコミュニケーションは一度もない。(長男に)喜怒哀楽はあるが、普通の人と違い、何か理由があって笑ったり泣いたりはしない」

一家は平成3年に大阪市内から三田市に転居。長男の閉じ込めは大阪時代に始まっていた。

弁護士「(大阪で)どのような生活をさせていたのか」

父親「当初は一人部屋で生活させていた。暴れて妻の腕を噛んだりひっかいたりしたため、大工に頼んで『座敷牢』のようなものを作り、自分が留守の間はその中に入れていた」

会員限定記事

会員サービス詳細
Лучший частный хостинг