那覇空港や、沖縄本島西海岸の米軍基地返還予定地の一体的な開発を目指す「GW(ゲートウェイ)2050PROJECTS」の推進協議会が、全体構想(グランドデザイン)を発表した。
経済団体などの民間主導で、宜野湾、浦添、那覇の3市が参加している。
返還予定の普天間飛行場、牧港補給地区(キャンプ・キンザー)、那覇港湾施設(那覇軍港)と、那覇空港の四つを拠点に、「世界経済の玄関口」を目指す構想だ。
2050年に向けた成長戦略で、(1)沖縄の強みと世界の産業潮流を踏まえた成長産業(2)アジアを代表する人材ハブ(3)島しょならではの環境対応(4)沖縄独自の制度(5)成長を支える空港・港湾機能(6)経済活動・生活を支える交通機能(7)戦略的パートナーシップ-の7項目を掲げる。
50年までに名目県内総生産を24年の4兆9千億円から11兆円、一人当たりの県民所得を24年の254万円から624万円に押し上げることを目標とする。
具体的には「海洋資源など自然を生かしたブルーエコノミー関連事業」「医療データなどを活用した先端医療事業」「航空・宇宙事業などの領域の開拓」などに取り組むという。
島しょ県の沖縄では、過去にもアジアのゲートウェイ拠点化を目指してきた。しかし、いまだ道半ばの状況だ。
構想の実現に関しては何より確実な手だてを確保することが求められる。
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拠点とされる米軍基地の返還時期は明示されているわけではない。日米両政府は普天間飛行場を22年度、牧港補給地区を25年度、那覇軍港を28年度とするが、いずれも「またはその後」とただし書きが付く。
さらに、返還条件としている県内移設には、県民の根強い反発がある。
人口の集中する地域で、これだけの広大な土地の返還は異例である。
速やかな利用には返還に合わせた周到な準備が不可欠で、まずは返還時期の明確化が求められよう。
世界経済の動向にも影響を受けるだろう。重要施策は県や市町村、経済界が認識を共有し、取り組まなければ成果は得られない。
全体構想では経済成長の下支えとして「次世代を担う人材のグローバル教育」も掲げている。
25年後の目標を達成するには、県民の理解と協力を広げなければならない。
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推進協は実行計画を策定後、県の新・沖縄21世紀ビジョン基本計画の中間見直しに反映させたい考えだが、県は推進協の枠組みに入っていない。
政治的に立場の違う経済界や保守系市長による「県外し」との指摘もある。
計画は経済にとどまらず、教育や福祉など沖縄全体の振興計画に及び、県の関与が欠かせない。計画段階から県の参加を求める必要があったのではないか。
壮大な構想を実現させるために、県全体で機運を盛り上げるよう望みたい。