米大統領と中国首相が急きょ会談 「南シナ海」協議
【バリ=中山真】オバマ米大統領は19日午前、東アジア首脳会議の開会に先立ち、インドネシア・バリのホテルで中国の温家宝首相と会談した。当初の予定を変更して急きょセットされたもので、南シナ海での「航行の自由」の確保や中国の人民元相場などを巡って意見交換したもよう。中国けん制へアジア各国との連携を強めるオバマ米政権に中国側は警戒感を強めており、アジア太平洋を舞台に米中両国の綱引きが激しくなってきた。
ホワイトハウス高官によると、18日の東アジア首脳会議の夕食会の席上で会談が決まったという。会談にはクリントン国務長官、ドニロン大統領補佐官らが同席し、30分の予定を上回る約50分間に及んだ。米国が初参加する東アジア首脳会議直前に、アジア太平洋地域の主導権を争う両国の首脳が直接、顔を合わせる異例の展開となった。
オバマ氏は今月前半から始まったアジア歴訪の外遊で「中国の平和的な台頭は歓迎するが、ルールに従うことが必要だ」と繰り返し強調。オーストラリアやインドネシアなどアジア各国との間で海洋安全保障をにらんだ連携強化を打ち出してきた。これに対し、南シナ海での領有権を主張する温家宝首相も「外部が干渉してはならない」などと反発していた。
今回の会談はこうした米中両国の高まる緊張関係を背景に、両氏が会議での攻防が始まる前に、直接、主張をぶつけ合う意味合いがあるとみられる。米主導で首脳会議が進むことに警戒感を強めていた中国側は米国との直接対話の場を設けることで、自らの主張を内外にアピールする必要があったとの見方もある。
会談では、人民元相場が低めに抑えられていることなどが米中間の貿易不均衡につながっているとする米国内の不満を伝えたもよう。東アジア首脳会議の主要課題の一つである「航行の自由」の重要性についても双方が異なる立場を主張しあう可能性が高い。
オバマ氏は19日、インドネシアのユドヨノ大統領と共同声明で、F16戦闘機の新型モデル24機をインドネシアに供与すると発表した。両政府間の安全保障協力強化の一環で、南シナ海での勢力拡大を進める中国をけん制する狙いがある。
米中は今月12日にもハワイで開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせてオバマ氏と胡錦濤国家主席が会談。人民元相場や中国の外国企業への規制などの改善を強く要求したが、胡氏は「人民元が上昇しても米国経済の問題は解決しない」などと反論し、議論は平行線をたどっていた。