富士通、リナックスで銀行システム 勘定系を7割安く
富士通は金融機関の入出金処理をつかさどる勘定系システムの中核部分に、設計図が公開されている無償基本ソフト(OS)の「リナックス(Linux)」を採用する。障害発生が許されない銀行の基幹システムをリナックスで構築するのは国内では初めて。リナックスと安価なサーバーを組み合わせ、価格をメーンフレーム(大型汎用機)の3割程度の50億円前後に抑える。大幅な低価格化で同業他社からの乗り換えや新規参入銀行からの受注を狙う。
まず大和証券グループ本社が、2011年中の開業をめざすインターネット専業銀行での採用を決めた。大和はリナックス勘定系の採用で銀行設立にかかる初期投資を抑え、早期の黒字化を目指す。
富士通は価格競争力に優れたリナックス勘定系を業界に先駆けて提供することで、金融機関の開拓を強化する。メーンフレームと専用OSで構築した勘定系システムを利用している自社顧客にも積極的に提案する。今後は、リナックスを主力OSと位置付け、製造業の生産管理システム、官公庁や自治体の記録管理システムなど、銀行以外の大規模システムでもリナックスの導入を進めたい考え。
国内企業はメーンフレームからリナックスに代表されるオープン型システムへの切り替えが欧米に比べて遅れており、IT(情報技術)関連コストが高止まりしているとされる。富士通は今年1月に稼働した東京証券取引所の次世代株式売買システムをリナックスで構築した実績をテコに、IT投資を抑制したい企業にリナックスを使った安価なシステムを売り込む。
ハイテク調査会社IDCジャパンによると、国内のサーバーOS市場におけるリナックスのシェア(金額ベース)は2008年時点で13%。メーンフレーム専用OSの21%の6割にとどまるが、シェアは増加傾向にある。富士通の動きをきっかけに、国内でもメーンフレームからリナックスへの置き換えが加速する可能性がある。
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