4回
2021/06 訪問
久しぶりの和食
緊急事態宣言もやっと解除され、一人か二人なら飲みに行くことができるようになった。解除後、立ち飲みなどには行ったが、やはり美味しいものが食べたいと思い、予約してこちらの割烹に訪れた。昨年10月以来の来訪になる。
まずは、醸し人九平次純米吟醸をお願いする。錫の酒器が清々しい。
先付は、玉蜀黍の摺流し。軍鶏と豌豆、枸杞があしらわれた冷たい一品。木の匙で頂くと、口一杯に優しい甘味が広がる。軍鶏の食感や豌豆の爽やかな旨味もいい。
続いて、椀物は、アコウに蓴菜。柚子とほんの少し梅肉があしらわれている。蓋を開けると、出汁の馥郁たる香りが立ち昇る。控えめな塩味が、アコウの旨味をしっかりと引き立てる。また、蓴菜は滑りが多く、プルンとした食感がとても心地よい。梅肉がアコウによく合い、美味しく頂けた。いつも思うが、椀が旨いと非常にうれしい。
向付は、アマテカレイ、烏賊、雲丹、鮪、アマテカレイは、マコガレイの瀬戸内地方での呼び名。鰈だけど淡白すぎないしっかりとした味わいで、とても旨い。また、烏賊は極細の糸造りで、旨味と甘味のバランスがいい。雲丹は何も付けなくても甘味抜群。鮪も赤身からトロの部分まであり、どちらの旨味が味わえる。どれも季節感が感じられる旨い造りで、酒によく合う。
続いて八寸が供される。焼き物は鱧の白焼き。骨と鰭は揚げて煎餅に。これに獅子唐と酢蓮根が添えてある。次の皿は、鱧の自家製蒲鉾、鱧の子、鱧照り寄せの三種、三の皿はズッキーニを炊いたもの。与の皿は、木耳と丸十。
鱧は、香ばしく焼き上げられており、ちょうど良い塩加減で、鱧の旨味がストレートに感じられ、美味しくいただけた。また骨煎餅は、カラッと揚げてあり、酒の肴にいい。鱧蒲鉾はじめ三種の料理は、様々な部位を使って料理したもので、甘辛味から淡白な味のグラデーションを感じることができ、これも美味しかった。ズッキーニも和風の味わいでいい。木耳と丸十は優しい甘味の箸休め。
ここで、日本酒をお代わりする。松の司純米吟醸。これまた直方体の錫の酒器で提供される。見た目も涼やか。
次は、蛸と素麺かぼちゃのポン酢ジュレ和え。とにかく、蛸の火入れ加減が絶妙で、柔らかいが心地よい歯応えを残してあり、ポン酢ジュレと絡んだところを頂くと、口の中に旨味が広がる。また素麺かぼちゃの歯触りも心地よい。とても美味しく頂けた。
留めの料理は、野菜の炊き合わせ。茄子、小芋、南京、牛蒡、パプリカが盛り付けられている。それぞれの野菜を口にすると、それぞれの野菜の特性を生かして別々に丁寧に味を含ませている。どれも旨いとしか表現できない。
食べ終わる頃に、お釜で炊いたご飯が供される。大将に聞くと、新茶のご飯とのこと。新茶の香りがすごく立ち昇り、とても清々しい。ご飯を口に入れると、ごく爽やかで香り高い。本当においしい。香の物や昆布も素晴らしい。
最後の水菓子は、白桃。大阪のかねちかという、岸和田の桃を頂く。これがめっぽう旨い。甘さと酸味のバランスがちょうど良く、こんなにおいしい桃を食べたことは、あまりないと感じた。
緊急事態宣言明けと言うこともあり、非常に良い素材を出していただいたのかと思うが、本当にどれも美味しく調理されたものをいただくことができ、とても感動した。真っ当な料理を頂くことがてきるこちらの店。これからも、折を見て頻繁に訪れたいと感じた。
2021/06/30 更新
2020/10 訪問
一年に一度の仕事の段取りが終わったこともあり、一人で食事に行くこととした。難波でお店を探し、思いついたのがこちらの割烹。昔、何度か訪れ、その度美味しい料理を頂いた思い出がある。この日はコースをお願いした。
まずは飲み物。磯自慢純米吟醸をお願いする。盃は錫のものをお願いする。
程なくして、日本酒と先付八寸が運ばれてくる。八寸のお料理は糸南瓜の和物、柿なます、生ピーナッツと栗、河豚皮の煮凝り、擬制豆腐、鯛の子、百合根といくら醤油漬け。どれも旨いし、酒によく合う。特に河豚皮の煮凝りは、河豚皮の食感と煮凝り部分の旨味ポン酢の爽やかさが上手く調和しており、好みの一品だった。
椀は、鱧と蓮根餅。蓋を開けると、控えめだけどふくよかな出汁の香りと柚子の爽やかな香りが立ち昇ってくる。まずは一口。淡い出汁加減の儚くでも奥深い味わい。微かに鱧の旨味も溶け出している。続いて鱧を頂く。これまた淡い中に旨味を感じる。蓮根饅頭は香ばしい。熱々を一気に頂く。最初の一口は物足りなさを感じたのに、最後の一口を頂く頃には鱧や蓮根餅そして出汁の旨味がちょうどよく感じる。まさに椀は和食の華だと感じる。久々に旨い椀を頂いた。
向付は鰈と戻り鰹の造り。鰈はポン酢、鰹は醤油で頂く。鰈はサラッとした爽やかな味わい。鰹は、脂の乗り加減がちょうどよく、今まで食べた戻り鰹の中でも五本の指に入る位旨い。あしらいの芽ネギも軽やかで、鰈との相性がとてもいい。日本酒によく合う美味しい一品たった。
続いて、焼き物は、かますの塩焼き。あしらいに銀杏とカボス。皮目に入れた包丁の切れ込みがとても美しいし、銀杏の緑も翡翠のように映えている。まずはそのまま頂く。脂が乗っているにとても品のいい白身の旨味を強く感じる。何より旨味を最大限に引き出す塩加減が調子いい。続いて、カボスを軽く絞って頂く。爽やかで引き締まった味わいになる。これも美味しく頂けた。ここらで日本酒が無くなったため、追加で松の司純米吟醸を注文する。
次はは野菜炊き合わせ。冬瓜、小芋、根曲筍、南京、小松菜に刻み柚子があしらわれた冷たい炊き合わせ。どの野菜にも、野菜の旨味を生かすように上手く出汁が浸みており、本当に旨い。
続いて油物は、シラサ海老と香茸、獅子唐の天麩羅。塩で頂く。シラサ海老はまさに天麩羅の王道。頭も香ばしく、身はさらっとした甘みが口の中で広がる。また、香茸は、東北産の珍しい茸らしく初めて頂く。口に入れると馥郁とした香りと少しほろ苦い旨味が立ち昇ってくる。これも旨い。熱々の天麩羅を日本酒と合わせて頂くことの素晴らしさをつくづく感じる。
最後に、釜で炊いた豆ご飯と胡瓜の糠漬けや昆布が供される。豆ご飯はちょうどいい塩加減で、豆と米の旨さが舌に鼻腔に広がる。すごく旨いが、もう満腹だし、家でゆっくりと食べたいと思い、残りを包んで頂いた。
水菓子は、季節感あふれる栗きんとん。大将の奥様が営まれている和菓子屋さんからの一品。栗の香りもよく、楽しいひとときを味わうことがてきた。
料理は総じて旨いし、酒もいいものが揃っている。大将や女将の優しいもてなしも心地よい。また季節毎に訪れたいと思う。
2020/11/07 更新
2007/02 訪問
藤久
美味しい料理と日本酒に惹かれて来訪。6000円のコースを頼む。まず、八寸は、蛍烏賊酢味噌和えをはじめ計6品。いずれも味わい深く日本酒に合う逸品。椀は程よくあぶられた鯛兜に上品な吸い口が張られたもの。出汁と鯛の塩加減が程よく調和し美味。向付は、雲丹、細魚、烏賊。雲丹非常に甘い。さよりはしその葉を挟みその色合いが美しい。油物は、タラノメ、ふきのとうの天麩羅及び白身魚(種類はわからず)などのかき揚げ。春の香りを感じさせる1品であった。更に地鶏の鋤焼(モモ、ムネ及びレバー)。あらかじめ皮目に焼きを入れており、歯ごたえ合って美味。最後に鋤焼のだしで雑炊に香の物が添えて供される。これにカラスミを追加で注文。日本酒に非常に合う逸品。
酒は、松の司儀吟醸をはじめ計5種を注文。いずれの酒も料理に合うものをそろえている。
以上で2名で約2万円。料理の説明はないが、最後に店主が挨拶をしてくれ,気持ちのいい接客であった。ひいきにしたい店であろう、
2007/02/24 更新
このところ、寒い日が続いている。寒い日にほっこりとミナミで食事したいと思い、こちらのお店に伺うことにし、コース料理の予約を入れて訪れた。この夜も凍える寒さ。
5ヶ月ぶりの来訪。まずはメニューを見て、大好きな醸し人九平次を注文する。錫の酒器が気持ちいい。
まず先付は、猪の燻製に蕾菜の酢味噌掛け。梅が描かれた器が春の訪れを予感させる。猪は薄くスライスされていて、口に入れると野生味をほのかに残しつつ、意外とくどくなく、あっさりと頂ける。蕾菜酢味噌掛けも、冬から春への移行を感じさせてくれる。
椀物は、しらさ海老のしんじょうと若布。蓋を開けると、出汁の馥郁とした香りが立ち昇る。出汁を口に入れる。いつもより少しだけ濃いめの味わい。続いて、しんじょうを頂く。旨味が強い海老の風味が口の中に広がる。出汁を少しだけ濃いめにされているのは、海老の風味に負けず、海老の旨味を楽しめるためだと感じた。こちらの店の椀は、いつ食べても旨いと思う。
向付は、細魚ととり貝。細魚は比較的身が厚いのに、綺麗に透き通っているようで、これも季節を感じる。山葵を軽く乗せて頂くと、上品な旨味が心地よい。日本酒も進む。また、とり貝は、旬には少し早いかも知れないが、湯引きされた身は甘味と旨味を強く感じる。
続いての八寸は、焼き物を盛り込んだもの。焼き物は、舌鮃の塩焼き、これに舌鮃の骨煎餅に玉ねぎのピクルスとトマトが添えられている。それに、独活と牛肉のきんぴら、飯蛸の含め煮、空豆、百合根に渡蟹の子の塩辛乗せ、青菜の胡麻胡桃和えが盛り込まれている。
焼き物の舌鮃は、肉厚の身に包丁が綺麗に入れられている。頂くとかなり薄塩である。身の旨味はよくわかる反面、もう少し塩が効いている方が好みかなと思う。続いて、骨煎餅を頂くとこちらは塩が効いていて、トータルて、ちょうどいい塩梅。大将にお聞きすると、椀物のしらさ海老、向付の細魚やとり貝に、舌鮃も、全て泉南の岡田浦漁港から水揚げされたものを仕入れたものとのこと。ただ旨いだけでなく、地元のものを大切に扱われているのが、とてもうれしい。
八寸の他の料理もいい。独活と牛肉のきんぴらは日本酒にもご飯にも合うだろうし、飯蛸の含め煮は、きちんと仕事がされており、中まで旨味が染み込んでいる、空豆や青菜も旨い。百合根に渡蟹の子の塩辛を乗せたものは、これを肴に、いつまでも酒を飲んでいたいと感じさせる。
野菜炊き合わせは、大根、白菜、小芋、人参、筍、蓮根、若牛蒡、青菜の八種類。どれも、それぞれの野菜の旨味を強く感じられるように炊かれており、素朴だけど、しみじみ旨いと感じる。
野菜の炊き合わせを食べ終えた頃合いを見計らい、羽釜で焚いたご飯が用意される。この日は、蛍烏賊の炊き込みご飯。釜からいい香りが立ち昇る。お茶碗によそって頂いたら、直ぐに口に運ぶ。小つぶなのに旨味たっぷりの蛍烏賊とその旨味が染みた後は、とても旨い。昆布と香の物ともよく合う。いくらでも食べられそうだが、もう一膳でお腹いっぱい。残りはお持ち帰りにしていただいた。
水菓子は、メロン。よく熟れているが、くどさはなく、品のいい甘さ。最後まで美味しく頂けた。
どの料理もしっかりと手がかけてあり、素直に旨いと思えるものばかり。また、大将との何気ない話も心安らぐ。また、季節ごとに訪れたい。