東京創元社の流通本が勢揃い! サイン本やグッズも充実の「創元 初夏のホンまつり2025」開催中
東京創元社が実施する「創元 初夏のホンまつり2025」が5月16日と17日に開催。東京都新宿区にある本社の駐車スペースを使い、流通している本をすべて並べて販売している。本屋での発売を控えた新刊もあれば、人気作家のサイン本もあって本好きたちを誘っている。公式キャラクター「くらり」のアクリルスタンドを始めとしたグッズも充実している。
会場となる東京創元社は、JRや東京メトロの飯田橋駅からほど近い場所にあって、16日正午からの開場前にすでに何人もの行列ができていた。中に入ると書棚の上に「東京創元社の流通書籍全点棚」の看板が掲げられていて、「書店で流通している東京創元社の本をまとめて見ていただけるようになっています」と東京創元社の渋谷健太郎氏も特長をアピールする。
「以前に比べて少部数から印刷できるようになったため、品切れとなっていたものを増刷してシリーズ全点を並べられるようなりました」と渋谷社長。書店では棚数が限られるため置ける本の数もどうしても一部となる。長いシリーズ物になると最新巻が中心となって既刊のものはなかなか置かれない。そうした、書店では見つけづらい本が「ホンまつり」に来れば発見できるというわけだ。
渋谷社長は、2017年に「ホンまつり」を始めた時の発案者で、「出版社が読者の方と直接触れあえる場を作りたいと思いました。会場には編集者もいて、そうした読者の人から話をうかがっています」とコメント。こうしたイベントの人気ぶりに他の出版社も関心を示しているようで、初日も近隣にある出版社から見学に来た人がいたらしい。
来場者にとっては、書店で見つけづらい本を発見できることも大きなメリットだが、人気作家のサイン本を手に取れるのもうれしい点だ。庵野ゆきによるファンタジーシリーズ『竜の医師団』第1巻などは、つい先月までサイン本が作られたことがないそう。ファンなら揃えておきたいところだろう。
東京創元社が鮎川哲也賞や創元SF短編賞など様々な新人賞を実施してることもあり、今回は「新人賞受賞作紹介コーナー」も用意された。各賞の受賞作を並べて紹介。コーナーに置かれた対象作品を購入した人に、これから刊行予定の小倉千明による第1回創元ミステリ短編賞受賞作『嘘つきたちへ』、同じく水見はがねによる第1回創元ミステリ短編賞受賞作『朝からブルマンの男』、笹原千波による第13回創元SF短編賞受賞作『風になるにはまだ』を掲載した冊子を提供している。冊子は先着順でなくなり次第終了とのこと。新人に興味がある人は急ごう。
版元の直売だけあって、書店に出回る前の本に触れられるのも特徴だ。今回は、5月21日発売の伊兼源太郎『ぼくらはアン』と丸山正樹『わたしのいないテーブルで デフ・ヴォイス』(ともに文庫版)などが用意されていた。また、中身がバラバラになっている不思議な造本のB・S・ジョンソン『不運な奴ら』の日本版試作品が置かれて、原書や参考資料のドイツ語版にひけをとらない造本が行われそうなことを予感させていた。
東京創元社の創立70周年を記念したフェアのために用意された、特別なカバーや推薦の帯がかけられた文庫も用意。本屋大賞受賞作で100万部を突破した凪良ゆう『流浪の月』の期間限定カバー本も買えるようになっていた。カバーではTVアニメの第2期が放送中の米澤穂信『〈小市民〉シリーズ』にアニメコラボのカバーがかけられたものも全点用意。アニメのファンでいろいろと展開が気になった人が、原作を手に取ってみることができる。
お祭りということで、楽しげな企画も満載だ。ギフトセットと称して特製の袋にシークレットで本を詰めて販売中。それぞれに「国内ミステリ編集者が選ぶ『貴方とならどこまでも行けるね』と思えるドライブ小説セット」のような中身が想像できそうなものもあれば、「山○春のパン祭り皿集めが趣味の社員主催東京創元社夏のパン祭り」のように予想が付かないものもあって、本好きの挑戦意欲を誘っていた。
東京創元社が創立60周年の際に制作し、現在は公式キャラクターになっている「くらり」が描かれたグッズも満載だ。アクリルスタンドもあれば品切れだったブックカバーも登場してファンを喜ばせた。
「ホンまつり」は2017年に第1回を開催し、コロナ禍だった2020年と21年は中止したものの2022年から復活。初夏の恒例イベントとしてすっかり定着している。「神田古本まつり」に出版社が屋台を並べて本を直接販売するようなイベントも人気だが、すべての刊行物を並べられるものではなく、読者にとって「ホンまつり」のような場は貴重である。
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