出場待機リストから本大会へ。逆転勝利の連続で決勝へ
テニス四大大会の中で唯一、芝コートで行われ、100年以上の歴史を誇るウィンブルドン選手権。
7月14日(日本時間)に閉幕したその2025年大会の男子ダブルス決勝へ、ノーシードから勝ち上がった急造ペアが進出して注目された。
オーストラリアの24歳、リンキー・ヒジカタと、オランダの34歳、ダビト・ペル。彼らはウィンブルドン開幕直前に初めてコンビを組んでエントリーしたが、当初は本戦への出場待機リストの1番手という扱いだった。
それが運よく欠場ペアが出たおかげで繰り上がって本戦へ代替出場すると、1回戦では第14シードのペアにマッチポイントを握られながら逆転勝ち。さらに2回戦も相手のマッチポイントをしのいで勝利すると勢いに乗り、3回戦は第3シードにストレートで完勝。続く準々決勝でも格上のペアにストレート勝ちし、準決勝は第1シード相手に最終セットでマッチポイントまで追い詰められながら、またも大逆転勝利を収めた。決勝では残念ながら地元イギリスの第5シードペアに敗れてしまったが、初結成のコンビでウィンブルドン準優勝を飾るのは、快挙以外の何物でもない。
ベテランのペルはダブルスを中心に戦っているが、ヒジカタは逆にシングルスの方に重きを置いている選手だ。にもかかわらずヒジカタは2023年の全豪オープンで、21歳にしてダブルスを制した実績を持つ。その時も29歳のオーストラリア人選手と大会直前で初めてペアを組み、ワイルドカード(主催者推薦)で出場権を得た。当然ノーシードだったのだが、シード勢を次々になぎ倒して優勝してしまったのだ。
日本人の血を引くオーストラリア選手
このヒジカタ、姓から察せられる通り、オーストラリア籍ではあるが日本人の血を引く。彼の誕生前にシドニーへ移住した両親は、ともに日本生まれの日本育ち。息子につけたリンキーの名は英語で綴るとRinkyだが、漢字で『凛輝』と書くれっきとした日本名だ。
近年の男子テニス界は選手の大型化、フィジカル重視の傾向がますます強まっている。190cm超の身長がありながらパワーと俊敏性を兼ね備えているプレーヤーも珍しくなく、日本勢は総じて苦戦気味だ。そんな中、178cm、72kgの体格で日本人そのものの風貌をした若きヒジカタの活躍には、我が国のテニス界からも熱い視線を注がれている。
さらに彼の家族についても、驚かされる事実がある。姉は米ハーバード大を、兄は東大を、それぞれ首席で卒業しているのだ。そして末っ子のリンキーはグランドスラム覇者。なんとまあ、多様な傑物ぞろいであることか……。
3人の子供たちは、オーストラリアの地でいったいどのように育ったのか? その30年を父親の土方誠氏【※「土方」の「土」は、土の右上に点】に振り返っていただいたので、ここに紹介したい。