少子化の原因として結婚の減少がよく挙げられるが、それだけではない。拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「出産後も仕事を続ける女性が増える過程で子育ての負担が家庭外に分散されてきたが、同時に不公平感が蔓延している」という――。
かしわ餅とミニュチュアの鯉のぼり
写真=iStock.com/shironagasukujira
※写真はイメージです

子育て世帯に向けられる「不公平感」

「どうして、こんなに子どもが少ないのだろう。」

街を歩けば、かつては賑わっていた公園や商店街が、静まりかえっている光景に出くわすことも珍しくありません。日本の少子化は、もはやニュースで報じられるだけの「他人事」ではなく、社会全体を揺るがす問題となっています。

厚生労働省の人口動態統計によれば、2024年に日本で生まれた子どもの数は72万988人。前年比5%減という衝撃的な数字であり、比較可能な1899年以降、最も少ない記録を更新しました。これは、国立社会保障・人口問題研究所が発表していた低位推計のシナリオに近づきつつあることを意味します。

そしてこの「子どもが減る」という現象とともに、近年懸念される問題があります。それは、子育て世帯に向けられる「不公平感」や「子持ち様批判」という新たな分断です。

「子持ち様批判」の拡大

「子持ち様」という言葉をご存じでしょうか?

ネットスラングであり、育児を理由に周囲への配慮を欠いた言動を取る親たちを揶揄する言葉です。例えば、子どもの発熱で突然休んだ同僚のフォローを任され、疲弊する独身社員のX(旧Twitter)投稿が爆発的に拡散されたことが記憶に新しいでしょう。この投稿を受け、SNSには不満の声が次々とあふれました。

なぜ、少子化とともに、こうした「不公平感」が社会に蔓延してしまうのでしょうか。今回の記事では、少子化と不公平感の関係性について、歴史的な背景や具体的なデータを交えながら、紐解いていきます。