第二次トランプ政権発足で、世界はどう変化するのか。軍事評論家の小原凡司さんは「今後の世界秩序における考え方は、アメリカ、中国、ロシアと共通している。日本は今のままでは厳しい状況にある」という。東京大学准教授の小泉悠さんとの対談をお届けする――。(後編/第2回)(インタビュー、構成=ライター・梶原麻衣子)
第二次トランプ政権発足前に中国軍の動きが変わった
(前編から続く)
――第二次トランプ政権の発足後、欧州各国は「アメリカは同盟国を守る気がないのでは」という意識から、かなり活発に動き始めています。中国はこうしたアメリカの動向をどのように見ているのでしょうか。
【小原】中国もトランプ大統領が言った通りのことをやるとは思っていないので、出方をうかがっている状況だろうと思います。
以前からアチソンライン(アメリカのアチソン国務長官が1950年1月に宣言した防衛ライン)が朝鮮半島の東側、台湾の東側に引かれ、朝鮮半島有事や台湾有事にアメリカは干渉しないのではないかという議論はあるのですが、仮にトランプが「関与しない」と言っても、それが本当かどうかは分からない。
中国としては「本当に関与しない」ことを担保したいので、その確認のための行動を取っている状況でしょう。
2024年末から、中国は軍の動きをガラッと変えています。燃料や物資の補給に関してシステムをかなり改修しているし、以前は実施前に演習名や実施区域などを公表・通告していましたが、やめてしまいました。
中国は2025年2月に、オーストラリアとニュージーランドの間にあるタスマン海で実弾演習を行いましたが、事前通告せず、民間航空便に大きな影響が出ました。
また、4月1日、2日に行った演習は「海峡雷霆2025A」と名付けられましたが、中国国防部は、この演習は二日目だけだと発表しました。これは「中国はいつでも柔軟に動くことができる」ことを示しているとしています。