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以下の文章は、コリイ・ドクトロウの「America is a scam」という記事を翻訳したものである。

Pluralistic

ドナルド・トランプは多くの顔を持つ。彼はレイシストであり、権威主義者であり、レイピストである。だが彼がはじめから、そして一貫して何であったかといえば……詐欺師だ。

https://www.washingtonpost.com/politics/donald-trump-alter-ego-barron/2016/05/12/02ac99ec-16fe-11e6-aa55-670cabef46e0_story.html

ドナルド・トランプの当選は、右派連合の多様なニーズを満たした。マスクを被った暴徒や狂信者たちは恐怖に陥ったトランスジェンダーの人々、移民、そして非白人を見て悦に浸っている。オリガルヒ階級――特にトランプのように富を相続した者たち――は大規模減税に胸踊らせている。公教育は破綻し、政教分離は破壊されている。

しかし、トランプ連合において最も重要で、最も優遇されている構成員は詐欺師たちだ。これは彼が2016年の選挙戦から掲げてきた公約であり、全国テレビで脱税を自慢し「それが私の賢さだ」と豪語したときからそうだった。

https://pluralistic.net/2024/12/04/its-not-a-lie/#its-a-premature-truth

複数のピラミッド詐欺を運営してきたトランプは、当然ながらポンジ詐欺師への取り締まりを骨抜きにしている。

https://pluralistic.net/2025/05/05/free-enterprise-system/#amway-or-the-highway

事業計画について投資家や顧客に繰り返し嘘をついてきたトランプは、21世紀で最も悪名高い投資家・顧客詐欺師を重用し、米国政府の再編を任せた。

https://www.wired.com/story/theres-a-very-simple-pattern-to-elon-musks-broken-promises

前政権下では、FTC[連邦取引委員会]や(最末期には)運輸省[DOT]が「不公正で欺瞞的な」商業慣行を阻止する権限を復活させていった。ファストフード店がレジ係に競業禁止「契約」への署名を強制している慣行に対しても、サウスウェスト航空が存在しない便の航空券を販売し、毎朝最も予約の少ない便をキャンセルして乗客を立ち往生させていることに対しても、幅広く対処していたのだ。

https://pluralistic.net/2023/01/16/for-petes-sake/#unfair-and-deceptive

しかし現政権は方針を転換し、どれほどセコかろうが残酷であろうが、いかなるラグプル1であろうと問題ないという姿勢を繰り返し示している。ひとつ例を挙げよう。RFKジュニアは先住民居留地での健康問題を加工食品のせいにしているが、USDAが行っていることは……先住民居留地に地元の新鮮な農産物を提供するフードバンクの廃止である。

https://www.propublica.org/article/tribal-food-grant-cuts-trump-rfk-jr

トランプはぼったくり候補者であり、詐欺の王なのだ。トランプコインを見てみよう。アメリカ合衆国大統領が自分のシットコインを発行し、人々が公然と彼に賄賂を贈れるようにした。そして、上位220位の賄賂提供者には、大統領に直接働きかけることができるプライベートディナーで報いると発表したのだ。上位の賄賂は、何百万人もの一般投資家から盗んだ罪で恩赦を求める億万長者の重罪者をはじめ、国内外の詐欺師や犯罪者たちの悪党リストと言っても過言ではない。

https://www.citationneeded.news/trump-memecoin-dinner-guests

しかし、実際の出席者たちは本当にトランプに賄賂を贈ったわけではなかった。彼らはトランプコインをショートポジションで保有することで、トランプを騙したのだ。

https://www.theverge.com/cryptocurrency/674327/trump-coin-short-sell-hedge-contest-dinner-winner

そしてゲストリストが発表された瞬間、彼らは保有分を売却し、トランプコインの価格を暴落させた。

https://protos.com/trump-token-15-since-dinner-as-40-of-guests-dump-by-dessert

しかしそれでは終わらない。トランプは彼らをさらに騙し返した。「大統領とのプライベートディナー」は地方遊説さながらに、会場にさっと現れて15分間話し、その後ヘリコプターで立ち去るというもので、トランプは「ゲスト」の誰とも面会しなかった。

https://link.nymag.com/view/640f640416f22cc291043cebntiap.15g1/0da0f946

超高密度スキャミウム詐欺ミウム238のブラックホールを作り出し、国家全体を詐欺の特異点に吸い込みかねない詐欺師のインセプションである。しかし詐欺師たちは気にしない――詐欺の技術とは、足を失うことなくワニの背中を渡って川を走り抜けることなのだ。彼らは長期主義者などではなく、いつだって逃げ出す準備は万全だ。

第2期トランプ政権は史上最も詐欺に優しい政権であり、誰もがそれを知っている。詐欺師たちは自分たちの詐欺にお墨付きをもらおうと列をなしている――たとえば、長らく禁止されてきた携帯電話のロック(自社ネットワークでしか動作しないようにし、ロック解除を拒否する)慣行を復活させたがっているVerizonのような企業だ。

https://arstechnica.com/tech-policy/2025/05/verizon-tries-to-get-out-of-merger-condition-requiring-it-to-unlock-phones

Verizonは、数十億ドル相当の公共周波数帯を独占する条件として、また競合事業者Tracphoneの買収――明白に反競争的な合併――と引き換えに顧客の携帯電話のロック解除を約束しなければならなかった。彼らがこれらの義務から逃れる可能性は大いにある。トランプ政権の詐欺師の一人であるFCC委員長ブレンダン・カーが「削除、削除、削除[Delete, Delete, Delete]」イニシアチブを立ち上げ、詐欺師たちに国民を保護する規制を指名させて、それらを廃止しようとしているのだから。

https://arstechnica.com/tech-policy/2025/03/fcc-democrat-to-resign-cementing-republican-majority-for-chairman-carr

トランプは教育省のコントロールを詐欺師リンダ・マクマホンに委ねた。彼女は詐欺師ヴィンス・マクマホンの妻で、すべてのプロレス団体を買収してパフォーマーたちの行き場をなくし、その後彼らを独立請負業者という偽りの再分類して医療保険を奪い、仕事上の怪我で50代半ばに尊厳を持って死ぬためにGofundmeの小銭を乞うことを余儀なくさせた人物である。

https://www.youtube.com/watch?v=m8UQ4O7UiDs

詐欺師リンダ・マクマホンは、530万人の学生ローン債務者を「無責任」だと言い放ち、ローンの取り立てを開始した。今後6か月以内に、さらに559万人が債務不履行に陥ることになるだろう。彼女は、これらの元学生たちの社会保障やその他の政府給付金からの差し押さえの道を開き、彼らに月750ドル(この数字は1996年以降インフレ調整されていない)での生活を強いている。差し押さえのたびに、(お金を奪われることに対する)20ドルの手数料が借金に追加される。

The American Prospect誌のデビッド・デイエンが書いているように、マクマホンは米国で最も詐欺的な学生ローンサービサーたちを学生ローン債務者に解き放っている。

https://prospect.org/education/2025-05-27-borrowers-besieged-student-debt

Maximus(Default Resolution Groupのオーナー)を例に取ろう。同社は債務者を欺き、口座からの違法に金を引き出し、資金差し押さえ時に債務者の法的保護についての説明を怠ったことで繰り返し訴えられている。教育省のローンサービサーは、債務者から金をむしり取るという、長い不名誉な伝統がある。巨大企業のNavientも、最終的に学生ローンサービスから完全に排除された。

https://www.consumerfinance.gov/about-us/newsroom/cfpb-bans-navient-from-federal-student-loan-servicing-and-orders-the-company-to-pay-120-million-for-wide-ranging-student-lending-failures

Maximusのようなサービサーは、債務者に自身の権利を知らせる法的義務を恒常的に怠っており、債務者がその権利――例えば給与差し押さえに異議を申し立てる権利――を知っていたとしても、Maximusは彼らの申し立てを無視するだけである。

https://escholarship.org/content/qt6rc8r76c/qt6rc8r76c_noSplash_41d21b1b129a7224ae49ae65621f8dda.pdf

デイエンはMaximusの長い罪状リストを挙げている――例えば、ローン再生に入り、10か月間で9回の支払いを行えばデフォルトを回避できることを組織的に通知してこなかった。債務者がこのプロセスを完了するたびに、彼らはMaximusの帳簿から外れるのだから、Maximusが説明しなかった理由は想像に難くない。

ルールは信じられないほど複雑だ。ローン再生に入った場合でも、5回に分けて支払いを完了するまでは給与から支払いを差し押さえられるおそれがある。ローンを統合することもできるが(20-25年後に取り消される可能性もある)、その場合、債務免除に向けて積み上げてきたクレジット(信用)も消え、新たなローンに利息を積み上げ始める。このどれかを間違えると、月々の支払いは減るどころか、むしろ増えるのだ。

CARES法はMaximusに債務者からお金を巻き上げることを停止するよう命じた――しかし一部の労働者は、既に借金を完済した債務者も含め、命令が発効してから17か月後も給与から差し引かれていた。

https://protectborrowers.org/wp-content/uploads/2022/12/SBPC_AWG_Final.pdf

学生ローンには、支払いを軽減したり債務を免除したりする仕組みがあるにはあるのだが、それも制度の複雑さによって覆い隠されている。実際、見つけ出すことはほとんど不可能だ(連邦学生援助事務所のウェブサイトでは、ページの数画面下に、わずか39語で触れているだけである)。この状況は、絶望した債務者たちを格好の餌食とする巨大な詐欺産業を支えている。これらの悪質業者は、債務者が自分でも簡単にできる書類作成を代行すると称して法外な料金を請求したり、あるいは書類作成を装いながら実際には何もせずに金だけ受け取って姿を消したりするのだ。

https://www.consumerfinance.gov/enforcement/actions/monster-loans-lend-tech-loans-and-associated-student-loan-debt-relief-companies

これらの詐欺代理業者は何千ドルも――未払い債務の最大40%――請求しておきながら、何もしないか自分で簡単にできることを代行するだけだが、債務者には詐欺師たちが何をしてくれたかを知るすべもない。それゆえ詐欺師たちは絶望的な債務者を搾取することで、何千万ドルも稼ぎ出せているのである。

https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/panda_prosperity_complaint.pdf

もうすぐ、社会はそうした絶望的な債務者であふれかえることになるだろう。教育省は、超富裕層向けのトランプ減税の予算を確保するため、学生ローンプールを3300億ドル削減した。これによって政府系学生ローンの金利は大幅に上昇し、借り手の負担は重くなる。同時に、学生が政府から借り入れできる上限額も大きく削減されることになる。学生ローンの生涯上限は学部生で現在5万ドル、大学院生は10万ドルになった。ペル奨学金(Pell Grant)は、週30時間のフルタイム履修をを要件化することで、学校に通いながらパートタイムで働かなければならない最も貧しい学生を排除するようになった。

では、学生たちは残りのお金をどこから得ればいいのだろうか? そう、略奪的貸し手からだ。民間学生ローンは現在、借り手の教育費の7%を負担している。これがまもなく90%になるかもしれない。これは、トランプ大学のような詐欺大学にとって素晴らしいニュースだ。同大学は学生に略奪的なローンを組ませ、役に立たない「教育」のために法外な授業料を支払わせたのだから。

https://en.wikipedia.org/wiki/Trump_University

ビッグ・ビューティフル法案には、詐欺大学を規制するセーフガードを骨抜きにする項目が数多く盛り込まれている。これがもたらすのは、詐欺的な教育機関を支えるためにさらに多くの公的資金が投じられ、教育を受けようとしているだけの純真な学生が利子をつけてそれを負担させられる未来だ。

デイエンはこれを「詐欺の黄金時代」と呼んでいる。

https://prospect.org/power/2025-05-27-golden-age-of-scams

彼は現在の詐欺を誘発する環境を、偽造貨幣が広く流通していたエリザベス朝イングランドの状況になぞらえている。サー・トーマス・グレシャムをして「グレシャムの法則」を作らせたあの時代だ。「悪貨は良貨を駆逐する」。グレシャムは悪貨を掴まされた人は誰でも、できるだけ早くそれを使おうとし、その悪貨を掴まされた次のカモはさらに次のカモを大急ぎで探すようになることを観察した。最終的に、誰もが優先的に偽造貨幣を使い、正規の硬貨を貯め込むようになる。

トランプの詐欺に優しい米国では、正直な企業が不利な立場に置かれる。車両の検査報告書で騙し、ローンで再び騙し、保証サービスで3度目も騙す自動車ディーラーは、通りの向こうの正直なディーラーよりも広告やマーケティングにより多くのお金を費やせる。サプリメントを売りつける詐欺師は、本物の薬を作る会社よりもマーケティングにより多くのお金を使えるのだ。

トランプは怪しげな暗号通貨取引所に恩赦を与え、ホワイトカラー犯罪の取り締まり官を骨抜きにし、米国民から盗んだ疑いで捜査中の企業や幹部から何千万ドルを受け取っている。消費者金融保護局はクレプトクラシー部門2を閉鎖したばかりだ(マジで!)。

https://news.bloomberglaw.com/us-law-week/bondis-day-one-corporate-crime-memos-rattle-white-collar-bar

他国政府の政権運営とは真逆と言っていいだろう。ドイツでは、Volkswagenのディーゼルゲート事件に関わっていた幹部2人が実刑判決を下され、うち1人は4.5の刑期だ。さらに31人の幹部がまだ法廷で追及されている。

https://apnews.com/article/volkswagen-germany-diesel-emissions-court-fraud-3878fcf6c06c9574bf5bff8d31029f90

詐欺は詐欺を呼ぶ。詐欺師たちは「正直者は騙されない」と嘯き、すべての人を自らの不正の共犯者にしようとする。正直でいれば騙されると思い込まされてしまえば、もはや自分も詐欺師の道を歩むしかなくなる。トランプとその詐欺師仲間たちは、我々の経済から誠実なビジネスと真っ当な取引のすべてを一掃しようとしている。そして彼らがあなたから金を巻き上げるとき、うわべだけの笑顔を浮かべながらこう言うのだ――「それが私の賢さだ」と。

Pluralistic: America is a scam (28 May 2025) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow

Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: May 28, 2025
Translation: heatwave_p2p

  1. 訳注:暗号資産業界の用語。プロジェクト開発者が資金調達後、突如プロジェクトを放棄し、投資家を置き去りにする詐欺行為。
  2. 訳注:公職者・権力者による不正・腐敗を追及するユニット
カテゴリー: Notes

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