エクアドルでカエルの新種が見つかった。しかし、すでに絶滅の危機に瀕している可能性が高い。
この新種は、長いこと近親種のPristimantis ornatissimusと混同されてきた。黄色と黒の体が特徴的な、よく知られたカエルだ。
新種のカエルを発見したのは、エクアドルのキトにあるサン・フランシスコ・デ・キト大学の進化生物学者フアン・マヌエル・グアヤサミン氏のチームだ。実は、このチームは新種を探していたわけではなく、既知の種を詳しく調べようとしていただけだった。
しかし、研究チームはあることに気づいた。北部の海岸地域チョコにすむカエルとアンデス山脈のふもとのカエルでは、体の模様に思わぬ違いがあったのだ。まずは写真でそれが明らかになり、実験室の標本でも確認できた。(参考記事:「新種の毒ガエルを鳴き声で発見、ペルー」)
「北のカエルの線は縦向きですが、南のカエルの線はどちらかというと網目状になっています」とグアヤサミン氏は話す。さらに、目の色も違ったという。「そこで、遺伝子を調べてみることにしました」
遺伝子の分析によって、彼らの観察眼が正しかったことが確認された。これらのカラフルなカエルは、それぞれ別の種だったのだ。新種はP. ecuadorensisと名付けられ、科学誌「PLOS ONE」で発表された。
しかし、科学者たちはまだ喜べない。このカエルは非常に珍しいうえ、生息地は狭く、脅かされている。グアヤサミン氏は、このカエルはすでに国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストの絶滅危惧種(endangered)の基準を満たしていると言う。(参考記事:「絶滅種のカエルを13年ぶりに再発見、エクアドル」)
特殊な環境に適応した珍しいカエル
動物が山や川などにより地理的に隔離された状態が長く続くと、進化によって新種が生まれることがある。
今回の場合は、カエルが大きな川によって他の種から物理的に隔てられたことで、新しい環境に適応して別の遺伝子を持つようになったものと考えられている。(参考記事:「トゲ肌からツル肌に早変わりする新種カエルを発見」)
新種のカエルが生息しているのは、エクアドルの雲霧林の限られた場所だけだ。他のカエルの生息地よりも350メートル以上標高が高く、しかも急斜面になった環境だ。
このような森から、珍しい特性を持つカエルが生まれた。「学校では、カエルは水中に卵を産むと教わります。しかし、この森はとても傾斜が激しいので、湖や池はほとんどありません」とグアヤサミン氏は言う。
これによって、直接発生と呼ばれる適応が起こった。「メスは植物や落ち葉など、湿った場所であればどこにでも卵を産みます。そこから生まれる子供は、完全なカエルの形をしているのです」。つまり、オタマジャクシの段階を完全に飛ばしてしまうのだ。(参考記事:「【動画】カエルの交尾に「7番目の体位」発見」)
「環境に適応することによって、カエルはこの森で暮らし、繁栄することができたのです。適応できなければ、この森にこのカエルは見られなかったはずです」
特殊な適応は「二重の不運」
しかし、こういった場所も決して手つかずの自然のままというわけではない。グアヤサミン氏は、「エクアドルでは、海岸沿いの森林はほとんど伐採され、草地や農地にされています」と言う。
「新しいもの、特にこのような美しいものを見つけると、いつも心が躍ります。しかし、特に海岸沿いで見つかるものはみな、すでに危機に直面しているのです」
新種P. ecuadorensisもすでに切迫した状態にある。米コーネル大学の進化生物学者ケリー・ザムディオ氏はこの研究には関わっていないが、その窮状について「とても残念なことです」と電子メールを寄せた。
このカエルの生息場所が限られていること、しかも特殊な環境に適応した種であるということは、まさに「二重の不運」なのだという。(参考記事:「絶滅寸前のカエルを火山から救え! エクアドル」)
ザムディオ氏は、「このニュースの良い点は、そこに新種のカエルがいるのがわかったことです。それによって、何か手を打つことができるようになります」と述べている。
研究チームを率いたグアヤサミン氏は、この研究がエクアドル北部沿岸の環境保護につながることを願っている。沿岸部はさまざまな種の宝庫だが、熱帯地域に比べて保護されている場所は少ない。(参考記事:「謎多きヘビの新種3種を同時に発見、南米」)
「誰もが、最大の危機に瀕しているのはアマゾンの熱帯雨林に生息する種だと考えています。しかし、チョコやアンデス山脈西部の丘陵地帯こそ最優先であることをもっと訴えてゆかなければなりません」