ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE
第2戦 SUZUKA S耐
#3 ENDLESS GR86
参戦クラス:ST-4クラス
Aドライバー:坂裕之
Bドライバー:菅波冬悟
Cドライバー:小河諒
Dドライバー:島谷篤史
監督:中村稔弘
開幕戦もてぎでは2レースが行われたST-4クラス。レース1、レース2ともに#884 シェイドレーシング GR86(シリーズ44ポイント)、#41 エナジーハイドロゲン EXEDY GR86(同30ポイント)に続いて3位でのフィニッシュとなり、シリーズランキングも3位(同24ポイント)となった。強力なライバル2台が上位に位置しており、シリーズチャンピオン連覇を目指すチームにとっては鈴鹿での巻き返しが必須となる。
開幕戦を終え、チームはさまざまな部分の検証とそれに伴うアップデートを施してきた。#3 ENDLESS GR86にとってこの鈴鹿が大事なレースであることはもちろんだが、約1か月後には大一番の富士24時間レースが控えているタイミング。大量ポイントが獲得可能なレースが待ち受けているだけに、この鈴鹿で速さに磨きをかけたい。
今回からDドライバーに島谷がエントリー。島谷はキャリパー設計を行っているエンドレスの社員だが、S耐をはじめ、筑波サーキットでのタイムアタック経験やオーストラリアでのチューニングカータイムアタック・WTAC参戦経験などドライバーとしての経験もある。島谷のスキルや経験を活かしてキャリパーの実戦テストを行い、エンドレスの新商品開発に活かしていく。島谷は富士24時間をはじめとした今シーズンの残りのレースにエントリー。新たに4名体制となる#3 ENDLESS GR86は、クルマのアップデートと製品開発を進めながらシリーズチャンピオンを目指す。
予選
A 坂裕之:2’21.906 クラス3番手
B 菅波冬悟:2’20.649 クラス5番手
C 小河諒:2’23.611 クラス5番手
D 島谷篤史:2’25.757 クラス2番手
→予選結果:2位/7台中
4月26日(土)14時00分から予選が行われた。晴れた鈴鹿は過ごしやすい気候。週末は天気予報も晴れで、ドライコンディションでの予選、決勝が予想される。
坂は練習走行から好調をキープ。新品タイヤになったことによるマシンバランスの変化や、わずかなシフトミスもあったが、それでも目標としていた2分21秒台をマークしてクラス3番手。菅波は2分20秒649をマークしてクラス5番手。Cドライバー小河とDドライバー島谷は中古タイヤ・ガソリン満タンで決勝を想定して走行。レース中を見据えたセッティング確認を行い、小河は2分23秒611、島谷は2分25秒757をマークした。
A+Bドライバーの合算タイムは3番手となったが、予選後の車検で2番手#41にレギュレーション違反が見つかりタイムが抹消。これにより#3 ENDLESS GR86は#66 odula TONE MOTUL ROADSTER RFに続く2番手からスタートとなった。
決勝
決勝結果:3位
決勝レースは11時05分にスタート。5時間の耐久レースが始まった。スタートドライバーは坂。レース序盤でAドライバーの最低乗車時間を消化し、その後は菅波、小河、菅波と繋いでいく作戦。
坂はスタートから#66に続いて順調に走行。一方エースドライバーの冨林選手がステアリングを握る最後尾スタートの#41も、グイグイと順位を上げて3番手に浮上。その後ろに#884が続く。速さのある#41の猛追を坂が抑えきれば、菅波、小河のプロドライバーが続く#3 ENDLESS GR86に勝機が見えてくる。しかし坂の奮闘むなしく12周目まで抑え込むも、#41にパスされ3位へ。
スタートから約45分が経過したところでシケインにてクラッシュが発生。車両回収のため長めのFCYが導入される。#3 ENDLESS GR86は変わらず3位でレース再開となったが、直後にデグナーコーナー2個目でコースアウト車両が発生し再びFCYが導入。
すると26周目、再びコースアウト車両が発生。レースはスタートから1時間が経過、Aドライバーの最低乗車時間が消化済みのため、坂から菅波へドライバー交代を行うタイミングだ。加えてコースアウト車両発生によりFCYの導入が推測される状況。FCY導入前にピットインを行えれば、FCY中にピット作業を行うことでピットでのロスタイムを減らすことができる。
しかしながらFCYが導入されてしまうとピットインは禁止となってしまい、ペナルティの対象になってしまう。坂がピットロード入口に入ったタイミングで、FCYによりピット入口が赤信号になった。微妙なタイミングだったが、信号が赤に変わった時点でコースに戻ることはできない。そのままピットインを行い、ドライバーは坂から菅波に交代した。タイヤ4本交換と給油3本のフルサービスを実施してコースに復帰する。ピットイン時の処遇について不安は残るも、裁定が出るまではライバルたちとの戦いに集中する。
38周目、コース上のデブリ回収のためこのレース5回目のFCYが導入。スタートから約2時間経過し、トップの#66ロードスターはまだピットインしていない。#3 ENDLESS GR86は2位につけており、ピット回数を考えると実質トップ。後続の#41はピットインを終えて4位を走行。2時間半を迎えた時点では、#66がピットインしたことで#3 ENDLESS GR86がトップを走行。2位を約1分離す快走で菅波が順調に周回を重ねる。
しかしスタートから2時間40分を迎えたところで、#3 ENDLESS GR86にペナルティストップ60秒の裁定が下ってしまう。1回目のピットインがFCYによるピットクローズ中と判定されてしまい、重いペナルティを課せられることとなった。
59周目ペナルティストップ消化のためにピットイン。その直後の62周目にルーティンのピットインを行い、ドライバーを菅波から小河に交代。フルサービスでコースに復帰。ペナルティストップが大きく響き、順位は4番手に転落してしまう。しかし残り時間は約2時間、追い上げには十分な時間が残されている。小河は無難に走行を続けて3位に浮上。2位の#66も射程圏内に捉える。
93周目ピットイン。ドライバーは小河から再び菅波に交代。給油は3本の予定のところを2本で行けると判断。4輪交換を行ったフレッシュなタイヤと少しでも軽くなったマシンで追い上げていく。給油量の削減はピット時間の節約と引き換えにガス欠や追加のピットインの可能性もある作戦だが、巻き返しを図るべくリスクを取る。
3位の#41との差は14秒。トップ#884はまだ1回ピットを残していて、#3 ENDLESS GR86の1分16秒前を走行。#884がコースに復帰してきた時の位置関係が注目だ。
102周目#884がピットイン。1本給油とリアタイヤ2本交換を行うと2位でコース復帰した。最低ピット滞在時間が定められている2本給油を行った#3 ENDLESS GR86と異なり、すぐにピットアウトできる1本給油を行ったことで上位に浮上した。FCY導入が多かったことでガソリン消費量が少なかったことと燃費走行により実行したようだが、よりハイリスクな作戦で勝負を仕掛けてきた。これで1位#66、2位#884、3位#41、4位#3 ENDLESS GR86となった。
ところがこれで万事休すと思われた残り時間20分のタイミングで、#884にFCY中の追い越しによるドライブスルーペナルティの裁定が下された。#884は残り4分のタイミングでペナルティを消化すると#3 ENDLESS GR86は3位に浮上。そのままチェッカーとなり3レース連続の3位表彰台となった。
鈴鹿で圧勝した#66は驚異的な燃費とペースの速さを、#41はスピード、#884はストラテジーと、鈴鹿でのST-4クラスはさまざまな作戦と速さを持ったチームがそれぞれのアプローチを見せた。シリーズもますます混戦になってきており、シリーズポイントは1位#884:59ポイント、2位#41:52.5ポイント、3位#66 :42ポイント、4位#3 ENDLESS GR86:42ポイントと熾烈な上位争いが続く。
次戦は大一番の富士24時間レース。#3 ENDLESS GR86として昨年の3位が最高位だが、ENDLESSの誇る「開発力」を武器に、今年は悲願の24時間レース初優勝を果たしてシリーズポイント大量獲得を目指す。
坂裕之
「前回のレース後のミーティングをふまえてLSD、ブレーキ、ダンパー等の調整・変更を行い、持ち込んで頂きました。金曜日の走行のセット変更の際に走りやすいところが見つかり、予選ではミスはあったものの目標とするタイムを出すことができました。決勝ではスタートを担当させて頂きましたが、良いペースで走れたかなと思います。しかしピットインのタイミングとFCYのタイミングが重なってしまったことで、ピットクローズ直後にピットインしてしまいペナルティを受けてしまいました。瞬時の判断ミスでチームのみなさんに迷惑をかけてしまい申し訳ありません。走り以外の部分もしっかり見直して次戦の24時間レースをミスなく走り切りたいと思います。応援ありがとうございました」
菅波 冬悟
「ライバル達との大差を埋めるべくして挑んだ今大会でしたが、かなり改善できたと思います。今大会に向けてのチームやメカニックの皆さんの作業が実ったと思いました。一方、まだ自力での優勝を果たすにはパフォーマンスが不足しており、次大会までにそこを改善できるかがシリーズ争いにおいて重要になると思います。今大会は前大会に引き続きの3位となりましたが、ラッキーでの3位ではなく自分たちの実力通りの3位でしたので一歩前進したと感じました。次のレースまでにテスト走行の予定もありますので、もう一歩レベルアップできるように引き続き頑張ります」
小河諒
「今回の自分のスティントを振り返ると、後半のペースが望んでいたものではなかったという課題が挙げられます。スティント前半のタイヤの使い方の改善と、レースウィークのクルマの作り方も含めていろいろと高めていかなければと思っています。開幕戦に2レースに比べると上位との差は縮まったように見えますが、まだまだ改善して行かなければいけないと痛感しています。今シーズンから使い始めたパッドやキャリパーなど進化を感じている部分もあります。それらを活用して富士24時間耐久レースではひとつでも前の順位でフィニッシュしてポイントを獲得したいと思います」
島谷篤史
「エンドレスの社員としてキャリパー設計などをしている島谷です。今戦から製品開発に活かす目的もあり、ENDLESS GR86のドライバーを務めることになりました。初のGR86・初の鈴鹿ということで慣れない部分もありましたが、実際に乗ることでさまざまなフィードバックを得ることができました。決勝を走った他のドライバーからはレース後半での制動力低下についてフィードバックがありました。それがブレーキの効きを弱める方向にアジャストしたパッドの影響なのかどうかについて、これから検証していきたいと思います。富士24時間ではしっかりと戦力となれるようにドライバーとしても準備しておきたいと思います。応援ありがとうございました」
監督 中村稔弘
「今回は木曜日から走行し、さまざまな製品開発テストができました。サスペンションは坂選手を中心としたセッティングを施し、テストも行いました。また、今年から導入したリヤキャリパーのRacingMONO2TAも継続してテストしています。サスペンションはスプリング長を変更して電子制御とのマッチングを確認しました。坂選手も前回の予選7位から今回は予選3位とかなり乗りやすくなったのではないかと思います。島谷選手も久しぶりのスーパー耐久ですし、GR86も鈴鹿も初走行ということでしたが、小河選手の約2秒落ちで走行できたのもセッティングが決まってきている効果かと思います」
「レースとしてはスタートから前半でいろいろアクシデントが起きることを予想し、坂選手でスタートして混戦を乗り越え、その後菅波、小河選手でクリアなところを走って頂点を狙う作戦でした。予想通りの展開となりましたが、わずかなタイミングの差でピットインがピットクローズ後となってしまいペナルティを受けてしまいました。それでも速さは確認できましたし、不具合も解消しました。大きなポイントが獲得可能となる富士24時間耐久に万全の体制で挑み、優勝を目指したいと思います」