中国の習近平国家主席は2月17日、同国の大手テック企業トップらを招き、北京市内で異例の座談会を主催した。参加者の中には中国ネット通販最大手アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)氏や電気自動車大手BYD創業者の王伝福(おう・でんふく)氏らの姿もあった。近年、政府による規制強化が中国経済の停滞を招いてきたことから、習政権が民間企業に対し、柔軟な対応へと方向転換したことを示唆していると専門家は分析する。
中国国営放送局CCTVによると、今回の会合に出席した大物実業家は馬、王両氏のほか、ファーウェイ創業者の任正非(にん・せいひ)や世界最大の電池メーカーCATLの曽毓群(ロビン・ゼン)氏、「中国のジョブズ」の異名を持つXiaomi(シャオミ)創業者、の雷軍(らい・ぐん)氏ら。
中国の新興企業DeepSeekの最新AIモデルは、大幅に低いコストで米巨大企業の技術に匹敵するパフォーマンスを実現したとされる。今回の会合は、DeepSeekが世界の株式市場とAI企業を震撼させてからすぐのタイミングで実現。米CNNは、「3年以上続く厳しい規制強化から回復途上にある中国のIT業界に楽観的な見通しをもたらした」と伝えた。
民間企業への規制強化のきっかけは2020年後半、馬氏が金融規制当局と金融機関を激しく非難したことだった。結果、広範囲にわたる民間企業に対する規制取り締まりは、テックコングロマリットのテンセントや配車サービスの滴滴出行、生活関連企業の美団など大手AI関連企業の発展に大きな影響をもたらした。
以来、かつては率直な発言で知られた馬氏は、公の場に姿を見せることはほとんどなくなった。
習主席との会談に馬氏が招待されたことは、「ビジネス帝国」アリババに対する懸念がほぼ解消され、当局がようやく取り締まりを緩和しつつあることを示唆していると、中国のテクノロジー企業規制に詳しい南カリフォルニア大学のアンジェラ・フユエ・チャン教授はCNN に語った。
同氏は、「国内経済が減速し、地政学的圧力が高まる中、政府はイノベーションを推進し成長を刺激するために民間部門を重視し、頼っていることが明らかになった」とし、今回の会合が「特にテクノロジー部門の民間企業を支援し、起業家の信頼を回復するための新たな取り組み」を示したものとして重要であると付け加えた。
CCTVによると、習氏は会合で、民間企業を重要視し、今後の発展を支援する姿勢を強調。一方、企業側には「中国の特色ある社会主義の建設者となるべき」で、中国共産党が進める党の「現代化」に貢献するようくぎを刺した。
世界第2位の経済大国である中国は、米中貿易摩擦の高まりの中、ますますタカ派的になる国際環境を背景に苦戦。中国政府が2022年後半から2023年初旬にかけて厳格な「ゼロ・コロナ」政策を解除したにもかかわらず、経済は急速に回復するどころか、不動産市場の崩壊と低い消費者信頼感に圧迫され、今も低迷したままだ。