はなまるうどんが、地元・香川に帰る──。
吉野家ホールディングス傘下で、讃岐うどんチェーン「はなまるうどん」を運営するはなまるは2025年1月、20年ぶりに東京都内から香川県高松市に本社住所を移転した。創業25年の節目に「原点回帰」を掲げ、地元香川への貢献を意識した施策に取り組む。
讃岐うどんのチェーン店では、トリドールホールディングスが運営する「丸亀製麺」が最大手だが、丸亀製麺は兵庫県で生まれたことから、香川県内では丸亀製麺が「讃岐うどん」を名乗ることに違和感があるという声もある。
2000年に香川県内で誕生したはままるうどんは今回、本社を移転し「地元愛」を全面的にアピール。また、香川県内での店舗リニューアルを通じて、丸亀製麺に遅れを取っている海外展開にもつなげたいと意気込む。
地元商店街に本社移転
「地元香川と一緒に、もう一度新しい価値を全国の皆様にお届けしたいという思いをもとに、原点回帰ということで1度香川を見直すことにいたしました。そして、その決意表明の意味も込め、創業の地の香川県高松市に今年の1月に本社の所在地を移転した」
はなまるの前田良博社長は、都内で開かれた記者発表会でこう宣言した。
はなまるうどんは、2000年に香川県高松市に1号店をオープンした。「女性1人でもふらっと立ち寄れるうどんチェーン」を目指し、2002年には東京都内をはじめ県外への出店を開始。2005年7月に本社を都内に移し、2018年には現在の吉野家ホールディングスの連結子会社となった。現在では国内に418店舗を構える。
香川県内には工場や店舗はあるが、本社が地元・香川に帰るのは20年ぶりだ。
高松市に「Uターン」した本社は、商店街にある「はなまるうどん田町店」が入る建物の3階。約200平方メートルの事務所だ。現時点では住所を移転したのみで、今後工事を進めて3月中にはオフィス機能が完成する予定という。
実質的な本社機能は都内に残っており、社員の異動も現時点では未定。新本社は都内に勤務する社員が全員入れる広さというが、「適宜必要な人材、人員、機能を備えていこうと思っています。ただ、現時点でどこが何人っていうのはまだない状態」(前田社長)という。
地元香川を経由し海外再進出ねらう
はなまるうどんは2025年、「おいでまい!さぬきプロジェクト」と銘打ち、香川県のうどん文化を見つめなおす取り組みを始める。香川県内にある14店舗のうち5店舗を改装するほか、店内で県の特産品などを販売する。
讃岐うどんチェーンといえば、他に思い浮かぶのが丸亀製麺だ。
はなまるうどんの売上高は253億円(2024年2月期)であるのに対し、丸亀製麺の売上高にあたる売上収益は1148億円(2024年3月期)と4倍以上の売り上げ規模を誇っている。
丸亀製麺ははなまるうどんと同じく2000年に1号店を出店したが、香川県丸亀市ではなく兵庫県からスタートしていることで知られる。丸亀製麺は国内に約850店舗、海外は9か国・地域に展開しながらも、2025年現在、本場・香川県には1店舗しかない。
対するはなまるうどんは県内14店舗と、「東京と比べて人口あたりのはなまる密度は3倍以上」(前田社長)。「おいでまい!さぬきプロジェクト」の発表会は香川県議が登壇したほか、香川県知事からのビデオメッセージが流れるなど地元色の強いものだった。
「地元へUターン」という、丸亀製麺とは対照的な戦略を取るかに見えるはなまるうどんだが、実はその先には「海外への再挑戦」を見据えている。はなまるうどんはかつて、中国、マレーシア、インドネシアの3カ国に進出したが撤退した経緯がある。
前田社長は
「讃岐うどんを海外に広げるときに、セルフサービス以外の付加価値をもっと携えないといけないと考えています。次に海外に進出する時には今のスタイルでやるか分からないですし、どのような(讃岐うどんの)お伝えの仕方があるか、それを検証するためにも、香川でもう1回、地元の方々と一緒になって考えたい」
と話す。
とはいえライバル・丸亀製麺は、海外戦略でもすでに大きな実績を上げている。丸亀製麺の海外店舗数は271店舗(2024年6月現在)で、今後もM&Aも含めて海外展開を加速させるとしている。
今回のはなまるの「本社移転」の狙いの1つが、丸亀製麺に遅れを取っている海外展開に向けた準備にある。
2025年に県内5店舗で予定している改装は、それぞれに特徴を持たせて異なるフォーマットで展開する予定だ。具体的には脱セルフサービス、スイーツなどうどん以外の目玉商品を持つ店舗、うどんを打つ体験ができる店舗──などを検討する。店舗改装にあたっての拠点として、高松市の新本社を活用していくという。
「やっぱり地元だから取り組めることもあると思う。そういったことにどんどんチャレンジしたい」(前田社長)