2024年のソニー製スマホのフラグシップ「Xperia 1 VI」が6月から発売されている。
ディスプレイ解像度のダウングレードやカメラアプリの一本化など、Xperia 1 VIはこれまでのXperia 1シリーズとは少し異なる進化をしており発表時に話題になっていた。
とはいえ、そんな変化の中でカメラとしての性能はどうなっているのか、本稿では各種作例やミラーレス一眼カメラ用交換レンズと比較しつつ、その実力をチェックしていく。
カメラとしては隙がない構成に
Xperia 1 VIは複数のカメラを備える。超広角の16mm(12MP)、広角24mm(48MP、クロップしての48mmもある)、望遠は光学ズーム85mm~170mm(12MP)の3つだ。
前機種「Xperia 1 V」と比べてカメラ構成の変化はいくつかあるが、カメラのスペックだけを見れば隙がなくバランスのいい構成になっている。
Xperia 1 Vにあった「広角カメラの性能が抜きんでており、そのほかのカメラは良好ではない」という問題はある程度解決されている。
ただし、広角カメラ以外の画質の向上は「スマホの小さい画面サイズで見る分には」という評価であって、PCのディスプレイなどで見ると露骨に描写性能差がわかる点に変わりはない。
望遠レンズが85mm~125mm(Xperia 1 V)から85mm~170mm(Xperia 1 VI)になったことで撮影の自由度が増えている。
個人的にはXperiaのレビューの都度触れている「妙に青っぽい緑」との遭遇率が大きく低下しており高く評価している。
また、カメラ性能と直接関係はないが、バッテリーライフは長くなった。
ディスプレイ解像度が4Kではなく2340×1080pxになったことが功を奏したのだろう。
丸1日撮影に酷使してもバッテリー残量50%以上あり、普段使いで重要な体験が強化されており、スマホとしてみると正常進化というワードがしっくりくる。
Xperia 1 VIの実力を作例でチェック
では、サンプルを見ていこう。今回は主に千葉・佐原で撮影した。
Xperiaのトレードマークでもある物理シャッターボタンの押下感もよく、コンパクトデジタルカメラ感覚で撮影できた印象が強い。
露出はミラーレス一眼などに比べて0.3~0.5EVほど高めにくるが、とりあえず明るいほうがコンシューマにウケがいいので、そうした絵作りの方向性は正解だ。
この点は他のスマホも同様の路線だが、Xperia 1 VIはシャドウが粘り強いため、途中からアンダー(暗めに設定すること)にしたまま撮影することが多かった。
広角レンズで撮影
超広角レンズで撮影
望遠レンズで撮影
画角を比較
テレマクロ撮影
電柱の作例
広角レンズで撮影
夜景を撮影
ボケの作例
食事の作例
クリエイティブルックの作例
やはり広角レンズを使うことが多かった
カメラアプリの変化、αとの比較も
Xperia 1 VIではカメラUIにも変更があった。
複数あったカメラアプリがひとつに統合された。基本的にはシャッターボタンをタップするだけでよくなった。
こだわり派のユーザーはデジタルミラーレス一眼の「α」シリーズと似た機能群を持つ「プロモード」を使ってもらうという意図がある。
ただし、プロモードは最近のαシリーズではなく、αシリーズ初期に近い機能ばかりになっているので、現行αユーザーにとってはちくはぐ感がある。
プロモードを見ると、明暗差が大きい時、自動で補正してくれる「DRO(Dレンジオプティマイザー)」の設定項目が前面からなくなり、撮影した写真をスマホ自身が考えて「描く」ように補正する「コンピューテショナルフォト」が優先されるようになった。
撮影結果に応じて重ね合わせなども行い補正するとざっくり説明があるだけなのだが、AUTOとOFFしかなく、またいつ実行されたのかも分かりにくい。
DROオン・オフの違いも顕著ではなく、プロモードに入れるのであれば本体上でもう少し説明を加えるべきだろう。
なお、コンピューテショナルフォトは通常モードでも機能している模様だ。
スマホカメラの画質はミラーレス一眼の画質を超えたか?
2022年にソニーセミコンダクタソリューションズ(ソニーの半導体部門)は、「2024年にはスマホカメラの画質がミラーレス一眼の画質を超える」といった見通しを出していた。
そこで、ここからは、Xperia 1 VIと「SONY FE 24mm F2.8 G SEL24F28G」を比較してみる。
比較対象のレンズとして「SONY FE 24mm F1.4 GM SEL24F14GM」じゃないのかと思った読者もいるはずだが、ハイライトが粘らない傾向はXperia 1 VIでも変わらずであったので、似た描写傾向にあるSONY FE 24mm F2.8 G SEL24F28Gを選んだ。
なお、ボディは筆者愛用の「α7R IV(ILCE-7RM4A)」。これは単純に筆者がイメージャーとISPのクセをよくわかっているから選んだ。
上記はサムネイルサイズだとホワイトバランスの路線や青空を部分的に拾っているかといった違いがあり、木々の描写の違いもわかりやすいが基本的な傾向はとても似ている。
Xperia 1 VIは「塗った」ような印象が強いのだが、本体で見る限りは違和感はないので「PCモニターで見ることは無視」なのだろう。日常利用では正解だと思う。
同じ部分を拡大してみると、違いはわかりやすく、SONY FE 24mm F2.8 G SEL24F28G+α7RM4Aのほうが細かな部分まで解像している。
当然の結果なのだが、L判でプリントアウトする場合、違いはまずわからないだろうし、スマホで見る分には拡大することはあまりないため、やはり違いは色味が違うくらいになるだろう。
気軽に楽しめるカメラになったXperia 1 VI
筆者はXperia 1 VIのレビュー中、日中はすべてのカメラを楽しく使え、夜になったら広角のみといった使い方に落ち着いた。
広角カメラの画質とそのほかのレンズの画質の差が気になるシーンはあるが、全体として気軽に楽しめるカメラに仕上がっている。
また、冒頭でも触れたようにバッテリーのもちがとても改善しているため、本来のスマホとして使う分にも快適だ。
「Xperia 1 III」(2021年発売)や「Xperia 1 IV」(2022年発売)から機種変更のタイミングであれば満足度は極めて高いはずだ。