一般社団法人日本玩具協会によると、2022年度のカードゲーム、トレーディングカードの売り上げは前年比132.2%の2348億9100万円となった。前年から572億円も数字を伸ばしたトレカの躍進は「2022年度の玩具市場規模が、調査開始以来、過去最高を更新した最大の要因」と日本玩具協会は分析している。
市場規模が拡大するにつれて問題となっているのが、ネット上での「トレカの転売や偽造品」だ。
取材の結果、各社がトレカの真贋鑑定を行ったり、トレカ発行元と連携するなど、2023年から対策を強化していることがわかった。場合によっては、アカウントの利用停止措置もあるという各社の回答を紹介する。
ヤフオク!が無料で真贋鑑定をするように
ヤフオク!やPayPayフリマを運営するヤフーは、2022年7月から一部の出品者に本人確認を求めるようになり、またヤフオク!では2023年8月から無料の真贋鑑定サービスをリリースした。
ヤフー広報は権利侵害商品への対策について、
「権利侵害品については、ガイドラインで出品禁止物に定めており、このガイドラインに基づくパトロールを行っております。また、知的財産権保護プログラムを運用し、権利者との連携のもと、権利者から権利侵害品の指摘を受け、商品削除等の措置を行っております」(ヤフー広報)
と説明する。
また、トレカの不正売買を防ぐために、2022年7月から「トレーディングカードを出品する際に、弊社が定める条件にあてはまった場合、出品者に対して事前に本人確認」(ヤフー広報)を求めている。これによって、トレーディングカード、自動車などの特定カテゴリで、かつ一部の条件にあてはまる場合は、新しい本人確認が完了していないと、出品ができなくなった。なお、本人確認が必要な条件については公開していない。
さらに、「発売日前の出品など、商品の現物を手元に確保していない出品と当社が判断した場合に、ガイドラインに基づき商品削除等の措置」をしているという。
8月にヤフオク!が開始した、高額トレーディングカードの出品時に真贋鑑定を無料で依頼できるサービスでは、トレカ専門店「カードラッシュ」を運営するRUSHが鑑定を担う。
鑑定対象となるのは、「ポケモンカード」「遊戯王」「マジック:ザ・ギャザリング」の3ブランド。RUSHで鑑定可能なトレーディングカードのうち、ヤフーの鑑定基準を満たした一部のトレーディングカードが対象となる。
出品者は出品したいカードを選択し、そのカードが鑑定対象だった場合、真贋鑑定を任意で申し込むことができる。出品されたカードの商品画面には、鑑定依頼の有無が表示されるため、落札希望者は安心して入札できる。
落札された商品は、出品者がRUSHに発送し、RUSHにて同社の真贋基準を満たしているか、出品時の状態説明と相違がないかを鑑定する。本物と判断されたカードのみRUSHから落札者へ配送される。出品者、落札者ともに鑑定料はかからない。
ポケモン社と連携するメルカリ
フリマアプリ大手のメルカリは、AIを駆使しながら、違反商品・違反取引を24時間体制で監視するほか、ポケモンカードを発行するポケモン社と連携して対応を進めている。
メルカリ広報は模造品について、
「模造品は禁止されている出品物にあたり、事務局が禁止出品物に該当すると合理的な理由に基づき判断した場合は、取引キャンセル・商品削除・利用制限などの措置を取る場合がございます」(メルカリ広報)
と説明し、利用制限という厳しい措置を取る可能性もあると言及した。
利用制限の期間は、違反の内容に応じて判断され、大きく3段階に分けられる。
- 期間が定められるもの(最大24時間程度のもの、日数が定められるもの)
- 制限解除への判断が伴うもの(本人確認や、詳細のヒアリングを実施) ※確認の実施後、解除すべきと判断した場合に限り、制限は解除される。
- 無期限(アカウントの利用停止)
内容によっては、1度目の違反であっても無期限の利用制限となる。
また、メルカリは2023年6月にポケモンカードを扱うポケモン社と「安心・安全な取引環境の構築に向けた包括連携協定」を締結している。
ポケモン社はメルカリに対し、「特定の新商品発売情報や商品情報、商品画像などの提供」を進める。両社で取組対象と定めた商品について、メルカリの利用規約・ガイドに違反するものには削除・警告などの対応、一方の購入者に対しては、両社共同の注意喚起、メルカリの公式ブログやアプリを通じて冷静に購入を判断するよう案内している。