- 中国は3月8日、カナダに対して3月20日から追加関税を課すと発表した。
- この関税により、カナダの農産物や食品が打撃を受けるだろうと中国の財政省が述べた。
- 中国は、カナダが中国製EVに課した「差別的」な関税が、この対抗措置を取るに至った一因だとしている。
中国は、3月20日からカナダ産の農産物や食品に対して追加関税を課すと発表した。これにより、世界的な貿易戦争がさらに進行することへの懸念が高まっている。
2025年3月8日の声明によると、中国財政省は、カナダからの菜種油、菜種ミール(油粕)、エンドウ豆に対して100%、一部の海産物や豚肉には25%の関税を課すとしている。
この決定は、カナダが昨年導入した中国製EV(電気自動車)に対する100%の関税および、中国製鉄鋼とアルミニウムに対する25%の関税という「差別的」な措置への対抗策として行われたと、同省は述べている。
アメリカの北に位置するカナダは、世界有数の菜種(キャノーラ)の生産国だ。その第2の市場となっているのが中国であり、カナダ菜種協会(Canola Council of Canada)によると、2023年にはカナダから中国への菜種種子、油、ミールの輸出額は50億カナダドル(約5140億円)に達した。
中国の発表は、経済的な圧力が強まる中、カナダが2つの方向からの貿易戦争に直面していることを意味している。
大西洋協議会ジオエコノミクスセンターのシニアディレクターであるジョシュ・リプスキー(Josh Lipsky)はBusiness Insiderに対し、中国の関税発表のタイミングが特に注目に値すると述べた。辞任を表明したジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相に代わる新しい党首をカナダの与党である自由党が明らかにする前日に、中国の関税が発表されたのだ。
「中国は報復措置を済ませておく必要があった」とリプスキーは説明する。
「アメリカとのより広範囲にわたる貿易戦争が始まる前に、カナダとの関係をリセットしようとしているのだと思う」と彼は続け、カナダで新たな指導者が就任する前に、中国は「すべてを整理したかったのかもしれない」と付け加えた。
また、貿易政策でアメリカとあまり密接に連携しないようにカナダに警告する意図があった可能性もある。
国営放送局の中国中央テレビ(CCTV)は、この関税について「カナダの誤った選択に対する強力な対抗措置であるだけでなく、アメリカに関税を課されないように中国に対して関税をかけようとする国々に対する強力な警告でもある」とする論評を発表したと、ニューヨーク・タイムズが報じた。
カナダ経済分析センター(Canadian Centre for Economic Analysis)のトップであるポール・スメタニン(Paul Smetanin)がBusiness Insiderに語ったところによると、中国の措置は驚くべきものではないが、「カナダが自国におけるグローバルな経済的利益を管理しなければならない繊細な状況」を強調しているという。
「今後、政府の優先事項は、ますます予測不能になる国際市場がもたらすリスクを緩和すべく、機敏な貿易戦略を構築することだ」
北米全体がドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の関税による脅威にさらされる中、このニュースはさらなる不確実性をもたらすだろう。
貿易戦争による経済的影響への懸念が高まる中、トランプ政権はカナダとメキシコからの輸入品に課す25%の関税を、一部については1カ月間除外すると3月5日に発表した。中国に対しては、全輸入品に対する関税を10%上乗せし、合わせて20%とした。これに対し、中国は即座に、報復措置としてアメリカからの輸入品に追加関税を課すと発表した。