31歳になる頃には、ある程度の成功を収めていた。
不動産開発では、ハーバーサイド・ファイナンシャル・センター(Harborside Financial Center)の開発で大きな成功を収めた。25歳の時、私とパートナーは工業用倉庫を購入して、それを近代的なコンピューターセンターに変え、数年後に売却した。
次の事業は成功せず、損失を出した。その後、私は不動産商業銀行「Emmes」を設立し、1998年に売却した。
ハーバーサイドを売却した当時は、「資産保全」という言葉を知らなかった。30歳なら、誰もが資産保全よりも次の事業に目を奪われがち。だが、事業で損失を出したことは私にとって警鐘となり、Emmesを売却して得た資産を失うことは避けたいと思った。
1999年、私は富裕層向け組織「TIGER 21」を設立した。これは富裕層が互いに交流し、資産や人生について話し合うための組織だ。私は、他の賢明な人たちが資産保全にどのように取り組んでいるのかを学びたかった。
この組織では、富裕層メンバーは、自身の投資ポートフォリオを秘密裏に共有し、フィードバックを受け取ることができる。また、子供たちを間違った方向に進ませない方法についても話し合うことができる。きわめて価値のある学びが生まれている。
事業を売却した起業家の支援が目的
私はTIGER 21の創設者で会長だが、私の第一の役割は「会員番号1番」であることだ。
私は、経営幹部向けコーチング組織「Vistage」を通じて知り合った6人でこのグループを始めた。6人は私と同様に、ほぼ同時期に事業を売却し、もはやCEOではなかった。起業から、投資と資産保全への移行に焦点を当てた新たなグループを作るために6人を招待した。
このグループは、事業売却した後は、人生の次の段階についての新たな知識体系が必要だという認識から生まれた。ファイナンスだけでなく、遺産、子供、健康、そしてコミュニティなどだ。
メンバーは主に、事業売却した経営者や起業家など、一代で富を築いた人々だ。生まれながらにして豊かだったわけではなく、富の管理は初めての経験だ。
中には遺産を相続し、管理しなければならないメンバーもいる。富を自身で築いた人たちと相続した人たちが混ざり合っていることで、富を築いた人たちは、自分の子供たちが富に対してどのような反応を示すかについての洞察を得ることができ、富を相続した人たちは、その富を築いた祖先の起業家精神を知ることができる。
直面している問題を共有し、投資ポートフォリオをプレゼンテーション
1999年、TIGER 21のメンバーになるための当初の基準は、運用可能な資産が1000万ドル(15億円、1ドル150円換算)以上だった。現在、当コミュニティは純資産2000万ドル(30億円)の人を対象としている。会員数は約1600人。
純資産は、厳格な入会審査プロセスの一要素にすぎない。私たちは会員資格の「5つのC」、つまり、Character(人格)、Contribution(貢献)、Capacity(能力)、Conditions(状況)、Capital(資本)を満たす人物を探している。
TIGER 21の年会費は約3万3000ドル、入会金5000ドルも必要だ。
会の中心となるのは、少人数グループによる月1回の終日のミーティングだ。まず、世界の最新情報と「パーソナル版取締役会」からスタートする。グループ全員が、この1カ月のニュースが投資と人生に対する考え方にどのような影響を与えたかを共有する。
次に、家族の問題や投資の検討事項など、メンバーが抱えている問題として挙げたいくつかの主要な問題について話し合う。
また生物多様性や中国など、特定のテーマについてスピーカーを招くことが一般的。そして最後に、ポートフォリオのプレゼンテーションを行う。メンバーの1人が、他のメンバーに対して、約1時間半にわたって投資ポートフォリオを説明する。参加者は全員、機密保持契約を結んでいる。
子育てや相続も議論
もし子供たちに財産を残すつもりなら、相続税の影響について考えなければならない。だが、財務面ではなく、子供たちへの接し方という問題もある。子供たちに等しく財産を残すのか、相続をどのように計画するのか?
こうした問題は常に話題にあがる。私たちは、この問題に対処するためにファミリー・オフィス部門も設置している。これは、ファミリー・オフィス(ファミリーによる財産管理のために設立されたプライベート事業)の主要リーダーを対象としたもので、相続計画、ファミリーのガバナンス、後継者育成計画などのテーマについて話し合うために、コアグループとは別に開催される。参加するには、年会費5万ドルと入会時に登録料として5,000ドルが必要だ。
最大の関心事はおそらく、富を守る方法ではなく、子育てに失敗しないことだろう。私は、会議のたびに、常にメンバーの子供たちに起きている状況や、それを建設的に解決する方法について触れていると思う。
最近、ファミリー・オフィス・グループに出席した際、2人のメンバーが子育て方法について意見を述べた。1人は、子供たちに落ち葉を集めさせたり、雑用をさせたりして、初めての車の購入費用は自分で稼ぐように伝えていると語った。労働と富の大切さを理解させるためだ。もう1人は、ファミリーの価値観をまとめた「憲章」を紹介した。
私たちは常に、ベスト・プラクティスについて話し合っている。
富の額は問題ではない。賢明に行動すれば、必ず報われる。愚かな行動をすれば、痛い目に遭う。