「(ChatGPTを手掛けるOpenAI CEOの)サム・アルトマンは39歳」
「若いハイパースケーラーと渡り合うには、まず若さが必要」
KDDIは2月5日、予定していた16時からの決算会見が始まる10分前、緊急会見の開催のお知らせを各報道機関に送付した。
その内容はその数時間前に報道があった、2025年4月1日付の役員異動に関するものだった。現社長の髙橋誠氏が会長に就任し、新社長には現取締役執行役員常務の松田浩路氏が抜擢された。
現会長で前社長の田中孝司氏は取締役相談役に就任する。
冒頭の言葉はその緊急会見で髙橋氏が語った言葉であり、KDDIが社長交代に至った最大の理由だ。会見では、新社長の松田氏が抱負を、現社長の髙橋氏が新たな体制への期待を述べており、その詳細をお送りする。
元エンジニアの松田新社長。スペースX連携の立役者
山口県出身の松田氏は、1971年11月30日生まれの53歳。1996年3月に京都大学大学院の工学研究科修士課程を修了し、同年4月に当時の国際電信電話(KDD、現KDDI)に入社した。
当初はエンジニアとして通信事業に携わり、2013年4月にKDDI 商品統括本部の商品技術部長に就任。2020年4月に執行役員になってからは、事業創造本部長や経営戦略本部長などを歴任してきた。
2024年4月から現職に就き、先端技術統括本部長や先端技術企画本部長も兼務。最新技術を追い求める松田氏は「技術が自分のコア」と語る。
そんな松田氏が「自身の長所」と説明したのは「対話力」だ。
「社外を含めたいろいろなパートナーと会話して、お互いのWin-Winポイントを粘り強く探っていくところが評価されたと感じている」(松田氏)
髙橋氏も、松田氏の対話力を高く評価する。松田氏はグローバル企業と対話する力にも優れているという。
「アップルやグーグル、クアルコムなどとの協議のほとんどを(松田氏が)やってきた。
最近では(スペースXの)スターリンク。最初の道筋は少し関与したが、その後はすべて彼がやった。語学も堪能」(髙橋氏)
また、髙橋氏が強調するのは年齢的なアドバンテージだ。
2018年4月に髙橋氏がKDDIの社長に就任した時の年齢は56歳。前任の田中氏が社長になったのは54歳の時だった。
それよりも若い53歳の松田氏が社長に就任することで、全社的な若返りを推し進めていく考え。4月には新社長の就任会見を開催する見通しだ。
髙橋氏「7年間はあっという間だった」
松田氏は自身が社長になった新たな体制で、次期の中期経営戦略の策定に臨むことになる。KDDIが現在掲げる中期経営戦略(2023年3月期~2026年3月期)が、2025年度で最終年度を迎えるからだ。
「次期の中期経営戦略は新たな体制で策定することが重要と考え、このタイミングでの社長交代に至った」(髙橋氏)
松田氏は、自身のルーツでもある「技術」を重視しつつ、これまでの事業戦略「サテライトグロース戦略」を推し進める考えを示す。
「我々のサテライトグロース戦略は、ど真ん中が通信で、周辺に金融やエネルギー(事業)がある。ここに、すべて技術を植え付けていく」(松田氏)
松田氏にバトンを渡した格好の髙橋氏は、自身がトップを務めた7年間について、「本当にあっという間だった」「(今は)解き放たれた」と充足感を見せた。今後は、松田氏を筆頭とした新たな体制のサポートに回るという。
なお、新人事発表の同日にKDDIは2024年度第3四半期(2024年4月1日~12月31日)の連結業績を公表。売上高は約4兆3641億9500万円(前期比2.3%増)、純利益は5365億円3100万円(同1.7%減)。
増収減益となった今回の決算だったが、髙橋氏は「(通期予想に対して)順調に進捗している」と自信をみせた。