2025年で50周年を迎える「キャンパスノート」などの文具に加え、オフィス家具も手掛けるコクヨ。そんな同社が今、IoTの製品群にも注力している。
1月29日には「大人のリスキリング」を支えるIoT文具「大人のやる気ペン」を発表。続いて2月26日には、IoTサービス「Hello! Family.」ブランドの新製品として、音声メッセージ機能付きのGPS見守り端末「はろここトーク」を発表した。
文具やオフィス家具といった、いわば「アナログ」製品に強みを持ってきたコクヨが、IoT製品の開発で活かせる強みはどこにあるのか。コクヨでHello! Family.のプロジェクトリーダーを務める山本容子氏に聞いた。
機能性が向上した見守り端末の新モデル
2023年2月に登場したHello! Family.ブランドはファミリー層をターゲットに、スマホアプリ「ハロファミアプリ」と電子機器を展開してきた。
これまでの製品ラインナップは、はろここトークの先代モデルに当たるGPS見守り機器「はろここ」、持ち物タグ「はろたぐ」、スマホとメッセージ交換できる留守番モニター「はろもに」、スマホにメッセージが送れる習慣化ボタン「はろぽち」、プリントカメラ「はろぷり」の5種類。
新製品のはろここトークの特徴は、前モデルにはなかった「音声メッセージ」機能を搭載した点だ。信号機に着想を得たという3色の「トライアングルボタン」のうち、緑色のボタンを押すことで子どもはメッセージを録音・送信できる。
オレンジ色のボタンは、親のスマホから届いた音声メッセージを聞くためのボタン。黄色のボタンは位置情報を通知するためのボタンになっている。
また、前モデルが搭載していた位置情報の送信機能は継承しつつ、機能性を向上させた。前モデルの通信ネットワークはソフトバンク回線のみだったが、はろここトークではNTTドコモ回線のネットワークが追加された。電波状況に応じて自動で切り替わり、「つながらない」リスクを軽減する。
はろここトーク本体の直販価格は5940円(税込)。さらに、通信費として月額572円(税込)~が加わる形。通信費がセットになったプランも用意される。
予約販売は2月26日から始まっており、製品の発送は6月末以降を予定。コクヨの直販サイトに加え、アマゾンや楽天市場などのECサイトでも販売する。
登下校問わず多様な場面で使えるようなデバイスに
市場を見ると、子ども向けのGPS見守り端末は競合製品も多い。機能面では多少差があるが直販価格や通信料金(いずれも税込)では横並びといった印象を受ける。
- 「あんしんウォッチャー LE」(KDDI)……5680円+月額539円、トーク機能なし
- 「まもサーチ3」(BBSS)……5280円+月額528円、トーク機能なし
- 「みてねみまもりGPSトーク」(MIXI)……5680円+月額528円〜、トーク機能あり
では、はろここトークの強みはどこにあるのか。開発の背景には前機種「はろここ」などユーザーからのフィードバックがあった。
前モデルでは「『今伝えたい、という時に伝えられない』というユーザーの声があった」と製品を担当する山本氏は説明。音声メッセージ機能によってそのニーズに対応する。
「子どもの登下校があったら留守番があって、留守番があったら1人で習い事をするようなシーンもある。さまざまな(利用)シーンを生み出していけるような製品にしたい」(山本氏)
文具や家具にとらわれない成長を目指すコクヨ
「はろここトーク」を含めたHello! Family.ブランドは、コクヨの新規事業を推進する「イノベーションセンター」から生まれた。先述の大人のやる気ペンも同センターから登場した。
Hello! Family.ブランドや大人のやる気ペンはいずれも、コクヨにとっては単純な文具ではない新しい分野の製品になるが、山本氏はイノベーションセンター発の製品も「コクヨらしさ」に基づいたものだと説明する。
「(コクヨは)シャープペンを作る発想というより、『どうやったら学びの環境を作れるか』というところから始める。体験ベースで考えていて、たまたま落ちたのが文具(という製品の形)」(山本氏)
こうした商品企画の考え方は、コクヨの歴史にも表れている。コクヨは、帳簿の表紙店として1905年に創業。以来、1914年開始の文具事業や、1960年開始のオフィス家具事業を核として、ユーザーのニーズに応える形で事業領域を広げてきた。
そんなコクヨは、2021年2月には「長期ビジョンCCC2030」を策定。大きく分けて「ワークスタイル領域」「ライフスタイル領域」の2つを事業を注力領域としている。
Hello! Family.ブランドは生活の中で使う製品としてはライフスタイル、家庭を持つビジネスパーソンにとってはワークスタイルに直接関係してくる製品だと言える。
山本氏は、Hello! Family.ブランドの製品ラインナップについて「(ユーザーを)なるべく(点ではなく)面で支えたい。(新製品を)1年に1個は必ず発売したいと思っている」と意気込みを語った。