いまや社会問題の1つとして認識されつつある、フリマアプリの買い占め・転売問題。
メルカリは7月30日、「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」の設立を発表した。
有識者会議は、ビジネス倫理学を専門とする慶應義塾大学の梅津光弘准教授を座長に、合計7人の有識者で構成され、メルカリのマーケットプレイス運営・管理のルールの「原則」について議論するものだ。
会議は9月末までに3回開催されるほか、フリマアプリ業界全体でも共有され、場合によっては法規制の呼びかけなどにも活用される可能性があるという。
コロナ禍で目立った高額転売問題
「(コロナ禍の)一連の出来事を通じて、社会の中で二次流通のマーケットプレイスが果たすべき役割、機能とは何かを、あらためて考えさせられました。
個人間での売買が身近で簡単になり、誰もが楽しめる。そういった体験が開かれていくことは良いことだと思っています。それによってサーキュラーエコノミー(循環型経済)が加速していくべきだと思います。一方で、多くの方が使えるようになったことで見えてきた課題もあります」(田面木宏尚取締役)
コロナ禍におけるトイレットペーパーやマスク、消毒製品などを中心に発生した一連の高額転売問題は記憶に新しい。それが今回の有識者会議の設立の背景にある。
スマートフォンの普及によって、フリマアプリの市場は一気に加速した。今では6000億円を超える規模にまで成長する一方、「単に売り買いする場所を提供している」では済まされない、社会的責任も意識する存在になったともいえる。
フリマアプリ業界が本来掲げていた適正な循環型経済を実現していくためにも、あらためてこれまでの成長によって見えてきた「課題」を整理する段階にきたとも言える。
「何が善で何が悪なのか」
有識者会議は、8月初旬の会合で基礎的な事実関係の整理や「あるべき姿」の議論を進めていく方針。その後、8月末〜9月初旬に原則の素案をつくり、9月後半に最終的な原則案を提示することとなる。
議論には、7人の有識者会議メンバーとともに、田面木取締役やメルカリの社員も複数人参加することになるという。
最終的に策定した原理・原則を業界内で共有するとしてはいるものの、議論の基本メンバーに同業他社の人員は含まれていない。
田面木取締役はこの点について、
「他社とは情報をつねに共有しながらやっていきたいと思っています。(会議の)回数を重ねる中で、論点が出てくると思いますので、そういったときには、他社にも声をかけて連携していきたいと思います」(田面木取締役)
と話した。
不健全な市場の適正化に期待
すでに、フリマアプリの利用について、一部では規制を強化すべきという議論も出てきている。実際、新型コロナウイルスの流行下において必需品となったマスクの転売は、規制されることとなった。
有識者会議座長を務める、梅津准教授は、
「本当に何がフリマアプリの良い使い方なのか、また、“悪用”というのはどういう使い方なのか、そういうことを話し合うステージがあってもよいのではないかと思います」
と、フリマアプリ市場が今後さらに発展する上で、法規制の前段階として、何が善で何が悪なのかを話し合う段階を経ることの重要性を語った。今後、議論の途中経過については、随時公開される予定だ。
メルカリをはじめとしたフリマアプリにおける高額転売問題は、新型コロナウイルスの流行以前からたびたび指摘されていたことだ。
そういった意味で、今回の有識者会議の設立と原理・原則策定の動きは、いち消費者からすると「やっと」という印象もある。
なお、有識者会議のメンバーは以下の通り。
- 慶應義塾大学大学院商学研究科准教授・ケンブリッジ大学訪問教授 梅津光弘氏(座長)
- PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス テクニカル・リード/PwCあらた有限責任監査法人 パートナー 磯貝友紀氏
- 法政大学経営学部教授 大木良子氏
- 編集者/ファッション・クリエイティブ・ディレクター 軍地彩弓氏
- 慶應義塾大学経済学部教授 坂井豊貴氏
- 株式会社ウツワ代表取締役 ハヤカワ五味氏
- 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授 山口真一氏
(文・三ツ村崇志)