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戦後80年…朝ドラ「あんぱん」に込めた「覚悟」 CPに聞いた、冒頭セリフ「正義は逆転する」の真意

[ 2025年3月31日 08:30 ]

連続テレビ小説「あんぱん」第1話。中年の柳井嵩(北村匠海)は柳井のぶに声を掛けられ…(C)NHK
Photo By 提供写真

 女優・今田美桜(28)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は31日、第1回が放送され、半年間にわたる放送の幕を開けた。注目の冒頭は、物語のモデルとなった漫画家・やなせたかしさんが生み出した絵本「あんぱんまん」が映し出された。そしてやなせさんをモデルとした柳井嵩を演じる俳優・北村匠海(27)の「正義は逆転する――」というナレーションが添えられた。この言葉には、今年戦後80年を迎える日本の未来への思いが込められているという。その舞台裏を、倉崎憲チーフ・プロデューサーに聞いた。(中村 綾佳)

 <以下、ネタバレあり>

 この物語は、生前のやなせさんが「アンパンマン」に込めたメッセージから始まる。

 「正義は逆転する。信じられないことだけど、正義は簡単にひっくり返ってしまうことがある。じゃあ、決してひっくり返らない正義ってなんだろう。お腹を空かせて困っている人がいたら、一切れのパンを届けてあげることだ」

 朝ドラ通算112作目となる同作は、やなせさんと妻・暢をモデルとした脚本家・中園ミホ氏によるオリジナルストーリーで、国民的キャラクター「アンパンマン」誕生までの夫婦の軌跡を描く。

 「やなせさんと暢さんの物語を描きたい」と企画したのは、制作統括の倉崎氏だ。きっかけは「アンパンマンのマーチ」との“再会”だった。

 倉崎氏はアニメ「アンパンマン」黎明期に生まれ、幼少期はグッズやおもちゃに囲まれて育った。そんななじみの深いアンパンマンの“メッセージ”に気付いたのは数年前のこと。今後の人生に漠然とした不安を抱えていた中、仕事帰りの夜道でふとアンパンマンのマーチを口ずさんでいた。「何のために生まれて、何をして生きるのか。分からないまま終わる、そんなのは嫌だ」。この時、やなせさんが作詞したこの主題歌の深さに気付いた。

 「幼い時に何度も聞いた歌ですが、改めて歌うと凄く哲学的だとも思ったんです。このままの人生でいいのか?何のために生まれてきたのか?と、みんなに問いかけている気がして。僕自身もこのままでいいのかと、雷に打たれたような衝撃を受けました」

 アンパンマンに興味が湧き、やなせさんの著書を読み漁った。その中で、お腹を空かせた子供たちに自分の顔を与える“異質のヒーロー”アンパンマンが誕生した背景には、やなせさんの戦争体験があることを知った。

 やなせさんは日中戦争中の1940年、21歳で徴兵された。その後太平洋戦争が勃発。弟を亡くし、自身も出征した中国で飢えを経験した。惨禍を目の当たりにしても、国民はみな「これは正義のための戦いだ」と教え込まれていた。

 やなせさんは「ミサイルで敵をぶっ飛ばすことが正義なのか」と疑問を抱きながらも野戦重砲隊としての任務を全うした。だが終戦後、日本は他国から「悪魔の軍隊」と罵られた。「正義の軍隊」だったはずなのに…。やなせさんは戦後「本当の正義とは何なのか」を考え続け、そして「飢えた人に一切れのパンを与えることは、揺るがない正義だ」ということにたどり着いた。

 倉崎氏は「このメッセージを伝えるのが私たちの使命」と奮い立った。奇しくも今年は戦後80年に当たる。戦禍の記憶が薄れつつある中、放送100年を迎えるNHKとしてできることは何か。

 「世界では戦争がまだ続いている。中園さん含めチームみんなで覚悟を決めて、やなせさんの戦争体験も描こうと決めました。朝から戦争シーンは見たくない…という人も当然いると思います。それでもアンパンマン誕生までの物語を伝えるために、避けては通れない。いろんなリアクションがあるかもしれませんが、覚悟を持って描きます」

 冒頭のナレーションには、やなせさんが絵本の中に描いた「逆転しない正義」を伝えたい…という倉崎氏ら制作陣の思いが込められている。この物語を通じてアンパンマンと“再会”した私たち。このメッセージを受け止めて、やなせさんが実現したかった「平和な世界」を未来へとつなげていく。

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