岐阜県予算案、過去最大9020億円　防災・人口減に重点

岐阜県は17日、2025年度の当初予算案を発表した。一般会計は24年度当初予算比で1.8%増の9020億円と2年ぶりに増加し、過去最大となった。公債費や社会保障関係費などの義務的経費の増大が要因。南海トラフ地震への対策強化といった防災分野や、女性や若者の働く環境整備を通じた人口減少対策などに重点を置いた。

6日に就任した江崎禎英知事は「新ビジネスの創出」や「中堅中小企業の生産性向上」など10項目を政策の柱に掲げている。記者会見で江崎氏は義務的経費や建設事業費などを除く、政策自由度が高い部分の大半を10項目にかかわる事業に充てたとし、「古田（肇前知事）県政をいい形で生かして江崎県政に引き継いだ」と話した。

25年度の県税収入は24年度当初比7%増の2743億円を見込む。賃金上昇や定額全税の終了に伴い個人県民税が増えるほか、企業業績の好調で法人事業税の伸びも見込む。

南海トラフ地震の震度分布や被害想定を見直し、対策を練るための調査費に約1億円を充てる。自治会と市町村が協力して行う避難訓練への支援も新たに盛り込んだ。江崎氏は「政策オリンピック」と称し、一部の施策で県民や団体・自治体から実施策を募り、優れた策を選んで支援を振り向ける方針を掲げており、この避難訓練事業に適用したい考えだ。

中小・小規模企業の稼ぐ力強化への支援は予算額を24年度当初の3億円から5億円に拡充する。生産性向上のために業態転換などを進める企業の経費を補助する。特に超時短勤務など新たな働く環境づくりに取り組む企業は補助率の上限を引き上げ重点的に支援する。多様な働き方を広めて岐阜県に人を呼び込む狙いだ。

人手不足対策として、人工知能（AI）やロボット技術を活用した生産性向上支援に1億3千万円を計上した。製造現場で使えるAIなど先端技術の開発を進めるほか、省人化や自動化技術に向けた企業の実証実験を支援する。

子育て支援では、従来の第2子以降の出産祝い金などに加え、双子や三つ子など多胎児の出生時に一人当たり10万円の支援金を支給する制度を設ける。

観光振興では世界的な観光地作りに注力する。環境や地域に配慮した旅を指す「サステナブルツーリズム」を指標とする国際認証取得などに向け、環境整備やオーバーツーリズム対策に取り組む観光地に補助金を出す。文化を切り口とした地域活性化支援に1億1千万円、県文化の国内外の発信にも1億7千万円を充てる。

県産食材や食品の輸出振興にも力を入れる。日本酒の販路開拓を支援するため、若者や外国人が好む酒を作り出すオリジナル酵母の開発を始める。地域商社などが海外の商談会などに出向いて県産食材の輸出を拡大する支援なども始める。

江崎氏が重視する鳥獣害対策には8億5千万円を投じる。ニホンザル対策に向けたアイデアを政策オリンピックで募り、優れた対策を支援して県内に横展開する。全地球測位システム（GPS）を活用したニホンザルの行動域を調べるモニタリング事業も始める。

新たな部局も設け、江崎氏のカラーを打ち出す。10項目の政策実現に向け部局横断で政策を練る「未来創成局」を新設。子ども政策や女性の就労支援などに一体で取り組む「子ども・女性部」や、国内外との交流深化に観光振興や文化・スポーツの担当が一体で取り組む「観光文化スポーツ部」も設ける。